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第1話

初めての独り暮らし
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2017/12/03 11:38
12月3日、日曜日。
社長令嬢の私は、突然家を追い出された。

その理由すら教えて貰えずに。


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家を追い出されたものの、マンションは既に用意されていた。そして、引っ越しの朝、父の部屋に呼び出されある条件を出されたのである。

『一、家事は全て自分でこなすこと。
一、食事は出来るだけ自炊を心掛けること。
一、仕送りはするが、何に使用したのかがわかるように家計簿を付けること。
一、恋人は作らないこと。』

以上の4点。
高校生になって、もう数ヶ月経過しているけれど"恋"とかは全く無さそう。そりゃそうでしょうね。私の父は某有名企業の取締役ですし、関わりを持って問題が生じれば、退学させるくらい簡単です。無論、そんな事は絶対にしませんが。



そして私は今、例のマンションの前にいる。建物は、いかにもな雰囲気で、セキュリティは最新式のタイプが多そうだ。
共用のフロアには網膜認証や異常ともとれる防犯カメラの数。もう普通ではない。気分が悪い。
学校はごく普通の私立高校である上、金銭感覚も普通かと。いや、少しケチなのかもしれない。お小遣いは月に3万円と多いが、実際使っているのは月に5000円程。100円均一をフル活用している。
握り締めている渡された鍵には101との数字が入っていた。



――ガチャ。
家に入ると、シンプルな白を基調とする壁や天井が目に入ってきた。奥には、バルコニーが見え、ガラス越しに青空が見えた。
陽の光、それを反射させる白色たち。電気を付けなくても十分な明るさがあることは、私にとって初めての体験だった。

荷物は届いていなかったが、15分後にインターホンが物静かなマンションの一室に響く。そうして、荷物の整理を開始した。
「あれ……」
段ボールを開けると、1番上に見覚えのない茶封筒があり、急いで封を指で破くようにして開けた。

『奏へ
この度は、突然で申し訳なかったね。なぜ。君はそう思うだろう。だが、まだ理由を告げることは出来ない。とりあえずは1年間頑張ってくれ。では。父より』

ここでリアクションを取るべきなのだろうけど、どうしたって、1年間ここで暮らすに変わらないし。

「よしっ、頑張ってみよ!」
初めての経験に胸を躍らせながらも、やっぱり不安の方が大きかった。

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