前の話
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12月3日、日曜日。
社長令嬢の私は、突然家を追い出された。
その理由すら教えて貰えずに。
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家を追い出されたものの、マンションは既に用意されていた。そして、引っ越しの朝、父の部屋に呼び出されある条件を出されたのである。
『一、家事は全て自分でこなすこと。
一、食事は出来るだけ自炊を心掛けること。
一、仕送りはするが、何に使用したのかがわかるように家計簿を付けること。
一、恋人は作らないこと。』
以上の4点。
高校生になって、もう数ヶ月経過しているけれど"恋"とかは全く無さそう。そりゃそうでしょうね。私の父は某有名企業の取締役ですし、関わりを持って問題が生じれば、退学させるくらい簡単です。無論、そんな事は絶対にしませんが。
そして私は今、例のマンションの前にいる。建物は、いかにもな雰囲気で、セキュリティは最新式のタイプが多そうだ。
共用のフロアには網膜認証や異常ともとれる防犯カメラの数。もう普通ではない。気分が悪い。
学校はごく普通の私立高校である上、金銭感覚も普通かと。いや、少しケチなのかもしれない。お小遣いは月に3万円と多いが、実際使っているのは月に5000円程。100円均一をフル活用している。
握り締めている渡された鍵には101との数字が入っていた。
――ガチャ。
家に入ると、シンプルな白を基調とする壁や天井が目に入ってきた。奥には、バルコニーが見え、ガラス越しに青空が見えた。
陽の光、それを反射させる白色たち。電気を付けなくても十分な明るさがあることは、私にとって初めての体験だった。
荷物は届いていなかったが、15分後にインターホンが物静かなマンションの一室に響く。そうして、荷物の整理を開始した。
「あれ……」
段ボールを開けると、1番上に見覚えのない茶封筒があり、急いで封を指で破くようにして開けた。
『奏へ
この度は、突然で申し訳なかったね。なぜ。君はそう思うだろう。だが、まだ理由を告げることは出来ない。とりあえずは1年間頑張ってくれ。では。父より』
ここでリアクションを取るべきなのだろうけど、どうしたって、1年間ここで暮らすに変わらないし。
「よしっ、頑張ってみよ!」
初めての経験に胸を躍らせながらも、やっぱり不安の方が大きかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。