オウニside
ニビは3人を連れて、先に暗闇を行ってしまった。
キチャは、ずっと『あなた』を抱き上げている俺を心配して、基地まであと半分のところで休むように言った。
俺は『あなた』を草むらに寝かせると、キチャが駆け寄って、自らの腰紐を解き、頭の下に置いた。
よく出来た子だと思う。
先ほど同じことを聞かれた時、俺は情念動のせいだと言おうとした。
だが、なぜ情念動を使わなければいけなかったのかと言うと、やはり俺が突然現れたからだ。
『あなた』が倒れたのは、俺のせいだ。
本当によく出来た子だ。
何者かも分からないやつを、看病すると言うのだから。
その後、俺たちはいつもより少し時間を掛けて基地に着いた。
着いたは良いものの、何しろここは寝具のひとつも無い。
なので、どうしようかと、キチャと話し合っていた時。
ニビたちが帰ってきた。
その両手に大きな荷物を抱えて。
ニビは掛け布団、ブキは敷布団、ジキとアイジロは食べ物を持っていた。
『あなた』を布団におろす、が、俺の服をぎゅっと握りしめているため、離れるのを躊躇う。
それは、ご苦労だった。
そう言って皆は部屋の外に出ていった。
残された俺は、あなたの横に座る。
依然、服を握りしめたままだった。
俺は、その手をそっと服から離して、握った。
人の手なんて自分から握ったのは、これが初めてかもしれない。
ほのかに暖かくて、和む。
俺は、あなたの横に寝そべった。
いつもは寝付きが良い方ではない。
仲間たちと寝る時も、中々眠れない。
だが、なぜかあなたの体温に触れていると、自分でも気付かないうちに眠ってしまっていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!