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第11話

朝焼けの中で
オウニside



なぜ、こうなった。


あなたが俺の胸に額をつけて、俺の手を握り返している。

それは、それで驚いた。

これは無意識なのか、それともあなたがしたのか…。

しかし、俺のことを敵視していたあなたがそんなことするはずがない…。

よって俺は、無意識で起こった事故だと考えることにした。



だが、問題はそこではない。

それ以上の問題で、俺は動けずにいる。


俺の左手は、彼女の手を握っている。

そして、俺の右手は、彼女の背中に回っている…。


なぜ、こうなった…。

明らかに俺があなたを引き寄せている。

明らかに俺が抱き着いているではないか。


ここで手を離せばいいのだが…離せられたらいいのだが、絶対起こしてしまう。


こんな恥ずかしいところを見せられるわけがない。

しかし、ずっとこのままというわけにもいかないのだが…。




…もう、どうにでもなれ。


俺はバッと起き上がり、手を離して、あなたが起きてしまったかも確認せず、部屋を走って出た。


そのまま基地の塀まで行って、座り込む。


オウニ
オウニ
はぁ
なんなんだ、あの焦りは。

あんなにも、焦ったのは初めてだ。

こんなに自分の感情の存在を感じることは、今まで少なかったのに。




東の空に、瑠璃色と葵色を混ぜたような朝焼けが広がる。

しばらく、ここで頭を冷やそう。

そうしないと、こんな顔など見せられない。


俺は目を閉じて、風を感じる。

今日の朝の風は、冷たくていつもより心地よかった。




しばらく経った頃。
あなた
起きるの早いんだね。
柔らかい声が響いて、俺は目を開けた。

ふわぁと声が聞こえて、伸びをする様子が、姿を見ていなくても想像できる。

オウニ
オウニ
よく眠れたか。
あなた
え……
俺がそう言うと、あなたは驚いた声を上げた。

そして、
あなた
ぷっ、あはははっ!
……。

オウニ
オウニ
なぜ笑う…
あなた
ふふっ、眠れたよ
あなたが俺の左側に腰をかけた。
あなた
あなたは?
そう言って、俺の顔を覗き込むあなたは、何か面白がっていて、楽しげだ。
あなた
あなたはよく眠れたの?
こいつ、確信犯だ。
オウニ
オウニ
何を見た
あなた
んー?なんだと思う?
オウニ
オウニ
……
あなた
ふふふっ
寝顔だけか?
それとも俺が抱き着いていたことか?

どちらにしろ、見られたくないものだ。
オウニ
オウニ
…どんなものだ
あなた
すっごく可愛いもの
オウニ
オウニ
そんなもの…心当たりがない
あなた
なくって当然だよ
そう言って、俺の左頰をつついた。
オウニ
オウニ
やめろ
あなた
…こんなことされたって、ちっとも覚えてないでしょ?
オウニ
オウニ
あなた
だって、ぐっすり眠ってたもんね?

あなたは、その黒髪を揺らしながら、ふわりと笑う。
オウニ
オウニ
全部知ってたのかよ
あなた
全部かはわからないけど、あなたの寝顔は可愛かった
オウニ
オウニ
…知らん
あなた
そりゃ…そうだね
オウニ
オウニ
……それ以外は見てないか…?
あなた
何を?
オウニ
オウニ
なんでもない
あなた
そう
幸い、俺が抱き着いていたことは知らなかったようだ。


俺たちは沈黙した。

ただ風だけがそよそよと吹いている。

あなた
ごめんなさい
オウニ
オウニ
あなた
昨晩は、本当にごめんなさい。あと、ここに運んでくれたことも
昨晩とは、随分な変わり様だとも思った。

だが、彼女に責任などないのだから、そんな声を出されても、俺が困ってしまう。
オウニ
オウニ
運んだのは俺の勝手だ。情念動を使わせたのも俺のせいだ。
あなた
え…?
オウニ
オウニ
だから、お前が謝ることじゃない
あなた
……
あなたは俺を見て、固まっている。

あまりにも長い間見られると、こちらも恥ずかしい。
オウニ
オウニ
あまり人は見過ぎるものじゃない
あなた
え、あ…ごめんなさい
オウニ
オウニ
あなた
そんなこと、言うんだ
オウニ
オウニ
…気に食わなかったか?
あなた
そうじゃなくて、『俺のせいだ』なんて言うんだなと思って
オウニ
オウニ
俺のせいだから、俺のせいと言った
あなた
…ふふふっ、あなたのせいじゃないのに、やっぱりあなた…可笑しいよ
オウニ
オウニ
悪かったな
あなた
ううん
オウニ
オウニ
あなた
私、いつもああなの。知らない人はみんな同じ様に見えて、どんな人でも攻撃してしまう。
結局は昨日みたいに自滅するんだけどね。
オウニ
オウニ
…島の人間とは、関係がないのか?
あなた
印ではマソオ兄さんだけ。あんな場所に私が住んでることは、あとは誰も知らない。
オウニ
オウニ
なぜ、あんな場所にいる
あなた
…なぜ、だろうね。
オウニ
オウニ
あなた
ただ、それが普通になってしまったから、とだけしか言えないや
オウニ
オウニ
そうか




朝日が眩しく光りだし、基地を照らす。



あなた
そういえば、あなたの名前聞いてなかったね。名前、教えて?
オウニ
オウニ
オウニだ。お前の名前はあなたで合ってるだろ?
あなた
うん。もしかして、これで分かった?
そういって、あの鉄製の飾りを触る。


オウニ
オウニ
あなたは読めた。でも、もう一つは読めない。
あなた
これはね、『ハニエル』って読むらしいの。でも、私にもそれがどういう意味かはわからないけど
オウニ
オウニ
『ハニエル』…異国の文字か
あなた
わからないけれど、読めないってことはそうなのかも
オウニ
オウニ
……
この文字が異国の文字ならば、あなたはなぜそれを身にまとっているんだ?

体内エリアに住んでいる、というだけで珍しいのに、それに加えて、何らかの形で異国と繋がっていたのなら、それは俺にとって最大のチャンスかもしれない。
オウニ
オウニ
お前のことを、教えてくれ
あなた
…わかった。もう、そう決めているから。
オウニ
オウニ
…どういう意味だ
あなた
オウニは知らなくていいよ
オウニ
オウニ
その代わり、とあなたが立ち上がって、朝焼けを見ながら言う。
あなた
私も、あなたたちのことを教えて欲しい。
例えば、『体内モグラ』が問題を起こす理由、とか。
オウニ
オウニ
俺たちが体内モグラだと知っていたのか?
あなた
昨日、問題を起こしたでしょう?その時マソオ兄さんから聞いたの。
『問題ばかり起こして体内送りにされる、体内モグラがいる』ってね
オウニ
オウニ
あなた
私はあなたたちの目的を知りたい。
オウニ
オウニ
わかった。
俺の言葉に、あなたは一瞬だけこちらを見て、ニコリと笑った。

その黒髪がはらはらと揺れて、光を反射し、金色に光りだす。

肌に付いた砂が反射して起こる、泥クジラの人々のその輝きとは違い、あなた自身から光を放っているようだ。


近くにいるのに、ずっと遠くに存在する。

そんな感覚に陥る。





沈黙が心地いいと感じたのは、初めてだ。


初対面の人間に感じる、息苦しさが無い。

昔からの仲間といるような空気感だ。


言葉なんて、無くてもいい。

そう思えた。




あなたの笑顔は、美しい。

他の泥クジラの人間とは違って、感情を押し殺していない。
だから、表情も感情的だ。


もっと、知りたい。

あなたのことを知れば、この世界のことも知ることができる気がした。



オウニ
オウニ
今朝は…
あなた
んー?
オウニ
オウニ
いつもより良く眠れた
あなた
……え?
オウニ
オウニ
……
あなた
ふふっ それはよかった
オウニ
オウニ
……
また、あなたが柔らかく笑った。













この時、俺は知らなかった。

あなたが空を見ていた時の笑顔が、今朝自分を抱きしめていた俺と、今の俺とが異なり過ぎ、可笑しくて笑っていたなんて。


それを知るのは、また別の話。