あなたside
私がそういうと、オウニは速攻で言葉を返してきた。
私たちは、朝早くだったこともあり、みんなを起こしてはいけないということで、 一度、体内モグラの基地から下に降り、人影のない場所まで行った。
私が手頃な泥の岩に腰を掛けると、オウニも私と少し距離をとった場所に腰掛けた。
普通、何か反応するでしょ。
随分と思い詰めたような顔にも見えるし。
嫌な感じだなあ。
出生の時点で共通点があるなんて、
私は、わざと大きく苦笑いする。
案の定、オウニは怪訝そうな目で私を見つめている。
相変わらず、この人は鋭い。
容易な嘘は、つく気はないけれど、すぐ見破られそうだ。
これは言うべきなのだろうか。
これがもし、オウニと繋がっていたなら…。
ありもしないことだが、色々な仮説が立てられていく。
これは、言ってはいけない…
そうだ。見ただろう、あの目を…
あんな目を向けられるのはもう嫌だ…
そんな曇りのない目で見ないでよ…。
私の『掟』が破れちゃうじゃない。
でも、とても嬉しかった。
誰かに、知りたいなんて言われたのは初めてだった。
だから、あなただから言おうと思った。
私が言い終えると、オウニは沈黙した。
その顔は、知っているものを、全て繫ぎ合わせようとしているようで。
私は膝に頬杖をついて、その様子を見ていた。
突然、私を呼ぶ声がして、私は腰掛けていた岩から転げ落ちる。
私はオウニの手を取って、走り出した。
今ので、オウニは納得したようだ。
同じような経験があるんだろう。
私はオウニを引っ張って、階段をひたすら駆け上る。
自分がどこに向かっているのか、私にはわかるはずもない。
だけど、人のいるところからは
その時、私の体が後ろに引っ張られた。
なんで引っ張るの…てか、落ちる!
結局、一段下に落ちた。
私は後ろを振り向く。
オウニが私の手首を後ろから掴んで、引き寄せている。
背中がとても暖かくて、安心するのと同時に、自分の意識とは正反対に、頬がカァッと熱くなる。
いや、こいつ鈍感過ぎ
自分じゃ分からないうちに、相手をその気にさせるんだから。
そう言って、彼の腕から逃げた。
この心臓の異常な打ち方を、私は知らない。
体中が、痺れるみたいに緊張している。
でも、嫌いな感覚ではなくて、
私の心はとても穏やかだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。