私たちは、泥クジラに着いたあと、すぐに長老会のいる尋問室に連れて行かれた。
リコスは中央棟へと監禁されてしまった。
自警団とマソオ兄さんが入り口で控えていた。
ハクジさんに呼ばれるも、その場を動けずにいる私に、オウニが手を掴み、引く。
オウニは私からゆっくりと手を離す。
私はもう一度長老会の皆の方へ向いた。
私ははっきりとそういった。
しかし、みんなの顔は曇っていく。
ハクジさんは、みんなは何が言いたいの?
シラアイさんが続けて言う。
私の目の前は、自分の涙で霞んでしまった。
ポンポンッ
見上げると、そこには困った顔したマソオ兄さんがいた。
私はゆっくりと歩み、シラアイさんの前で片膝をついて、屈んだ。
そう言ってシラアイさんは私の髪を撫でる。
私がそう聞くと、シラアイさんはすぐに。
私は、この時始めて自分の事がひとつ分かった。
オウニと私は、本当は離れていなければならない存在だったんだ。
だから私は地下にいさせられたんだ。
でも私たちはこうして出会ってしまった。
理由は分からないけれど、それは皆にとって計算違いだったんだ。
私は踵を返して、マソオ兄さんと尋問室を出た。
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『そんな私を、助けて出してくれたのは…マソオ兄さんとオウニだけなんです…』
兄さん…結局、体内送りにはするんだね…!
そうこうしているうちに、私たちは地下にある監獄へと着いた。
オウニの声が低く響いて、私に居場所を知らせる。
私が一つの監獄に近づくと、そこからオウニが見えた。
そしてチャクロも。
マソオ兄さんは苦笑いしながら、鍵を外して、扉を開けた。
私は監獄に滑りこんで、オウニの首に腕を回した。
私が小さく言うと、オウニは。
私には、今オウニにサイミヤが見えた。
まあ、恋仲に思われても仕方ないか…。
こんなにオウニにべったりじゃ。
いや気まずいわ!!
なんなのチャクロ。
変に気を使わないで欲しい。
オウニがやっと口を開いて、私を呼ぶ。
私がきょとんとしていると、オウニはふっと小さく笑って、寝転んだ。
私はオウニを揺さぶってみたが、それ以上はなにも話してくれなかった。
チャクロがおそるおそる私に問う。
私はオウニの側に寝転ぶ。
私は手持ち無沙汰になったので、そっぽ向いてるオウニの首飾りに手を伸ばした。
くいっくいっと引っ張ると、オウニは仰向けになってから、顔を傾けて私を見た。
オウニは私を自分に近づけさせた。
私はオウニの手で口を塞がれる。
一瞬、完全に忘れてた。
チャクロ、絶対顔赤くしてるよ。
オウニがため息をついて、口から手を離すと、その手を私の頭の下に回した。
腕枕してくれた。
なんやかんや優しいんだから。
オウニは冷静な顔で眠っていた。
ただいつもと違ったのは、耳だけがほんのりと赤くなっていたことだけだった。
監獄はチャクロの小さなため息が響いていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!