何日も目の前で美桜たちにイチャつかれ、私の中で何かが崩れた。
錦ちゃんに励まされ、私はついに美桜の住む屋敷へと向かった。
小さい頃来た時にも美桜の家の広さには驚かされたが、今はさらに拡大されている。
誰かに気づかれた時点で終わりだということは分かっている。慎重にしないと…。
木々の間を通り抜け、銀達がいそうな建物へと辿り着く。しかし、あまりに人がいないと嫌な予感を感じたその時…
首にひやりとした感覚。
刀が当てられていた。
私を見下すように囲んでいたのは四天王の3人…
そして、私は3人に連れられ銀のところへと行く。
身に刺さる沈黙…
今は届くはずのない言葉。
無駄だ、逆効果だと分かっていながらも口から滑りでた。
そう言って銀は私を押し倒した。
その目には愛など少しも篭ってはいない。
どれだけ助けを求めても誰も助けてはくれない。
銀との行為はとてもいいものだと思っていた。
でも、今は辛い。
こんな形で銀と初めてを迎えるなんて…
こんな乱暴にされるとは思ってもいなかった。
諦めた刹那、風が吹き、机の上の書物が舞った。
美桜は留守の間に私が来るとは想像もしていなかったのだろう。舞ったのは術に関する書だった。
『多くの血で術は消え蘇るであろう』
考えるのが早いかくらいの速さで、銀の脇差を抜く。
ブシュッ
私の手首からは鮮やかな血飛沫。
彼らの瞳がその紅一点を捉える。
意識が朦朧とする中、銀の声と3人が駆け寄って来る足音が聞こえた気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!