私が記憶をなくしてからの遥斗はとても大変だったんだろうな・・・
コンコン・・・
あ!遥斗とお母さんが来たのかな?
「はーい!」
ガラガラ・・・
「よ!優結体調どうだ!?」
「ふふ、めっちゃ元気だよ!」
「お、そうか?それならよし!」
「あはは、何それ」
「ふふふ、二人とも相変わらず仲がいいわねぇ」
「「ハッ・・・」」
お、お母さん!!そんな事言わないで!ってかお母さんの存在かくる忘れてた・・・
「・・・もしかして私が居るの忘れてたの?」
「「・・・・・・」」
お母さんがジトーっとした目で見てきた・・・
「そ、それより!私今から退院だよね!はやく家に帰りたいなー・・・?」
お母さんの顔色をうかがいながら私が言うと、
「プッ・・・ハハハッ」
「???」
お母さんが突然声を上げて笑い出した。そして涙を拭きながら、
「良かったぁ、元気になって。」
お母さん・・・
「うん!色々ごめんね、もう大丈夫だから。」
「そうね!よし!今日は優結の大好物のオムライスとグラタン作ろう!」
「え!?やったー!!!」
「遥斗くんもご両親が許してくれたらうちでご飯食べていかない?」
「もちろんです!食べます!」
「ふふ、良かったわ、じゃあ帰りにスーパーによって材料買って帰りましょう!」
トントントン・・・
台所からお母さんが食材を切る小気味よい音が聞こえてくる。私と遥斗は今私の部屋にいる。
「遥斗、はると、は、ると・・・」
「どうした!?どっか痛いか?」
私が急に弱々しく名前を呼んだから遥斗がすごく焦っている。
もう、がまんできない!
ギュっ・・・
「はると、大好き。愛してる。」
「き、急にどーした?」
「思い出したの。」
「え・・・?」
「記憶、全部思い出したの!」
「・・・優結?・・・本当に?」
「・・・うん、昨日夜みんなが帰ったあと一人で寝てたら夢みたいに、私がひかれた時のこと、その前のこと、梨花と綾美とめっちゃ遊んだこと、遥斗と、色んなことしたこと、・・・めっちゃ幸せだったってこと。全部、全部思い出したの!」
色々な感情がこみ上げてきて泣きそうになりながらも私は一生懸命遥斗に話した。
「本当に全部思い出したんだな、・・・クッ・・・良かった、よかった・・・」
「なんで遥斗が泣くのよ!私も泣きそうになっちゃうでしょ・・・ウッ、ウワァーン」
結構2人して大泣きしてしまった。1階からお母さんが心配して声をかけてくれたらしいけどそれに気づかないくらい私達は泣いていた。
そして、ご飯を食べる前にお母さんにも話したら、お母さんも号泣してすごく大変だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!