あなたはどこまでも走り続けていた。
見知らぬ街の見知らぬ公園。
行く宛もなく、あなたはたださまよい続けていた。
──テテは自分のことを性欲処理器としか思ってなかった──
その事実が何よりも重くあなたにのしかかっていた。
(ジミンまで傷つけて、勘違いして舞い上がって…馬鹿みたい…)
辺りがだんだん暗くなっていく。
あなたは泊まる場所もないため、公園の土管の中へ入り、一夜を過ごすことに決めた。
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潔く諦めて応援しようなんて、そんな青春漫画のように上手く行くわけが無い。
もし、あの場でテテとあなたがくっついていたとしても、嫉妬で狂いそうだっただろう。
じゃあ、僕はどうしたいの_?
" あなたを奪いたい "
" その瞳に、自分だけを映したい "
" テテの名前なんて二度と呼ばないでほしい "
溢れ出てくる感情は醜いものばかり。
あの場で強引に抱き寄せ、キスをして、襲っていたら…
テテのところには行かなかった?
そんなこと…考えたって仕方ないよね…。
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今頃、自分がどれだけ馬鹿なことをしたのかようやく気が付いた。
何やってんだよ俺。馬鹿じゃねぇの。
興味もない婚約者候補のプロフィールを並べ、思ってもいない酷い言葉を投げつけ
──最愛の人を傷つけた──
俺が冷静にあなたの話を聞いてあげていたら_?
あなたはきっと今頃、俺の腕の中で嬉しそうに笑ってたかな。
『テテ大好きだよ ッ…あ、ご、ご主人様…かな…?』
なんて、そんな可愛いこと言いながら俺を誘惑してた?
" ただの性欲処理器 "
なんて思ったことは、一度もなかった。
愛し方がわからないから、身体を重ねることで表現しようとしてた。
─こんなことするのはお前だけだよ─
って言いたかった。
でも、あなたがどんな反応をしてくるのか考えると怖かった。
もし、自分の想像してた反応と違ったら、今の関係すら壊れるんじゃないかって。
3人とも、違う場所で、同じ時に、溜息をついた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。