歩くこと約30分…。
何度も何度も道に迷ってようやく
目的地である
春ヶ丘学園に到着。
ここが、彼の通う学校。
なぜわかったかというと…
彼の着ていた制服。
この学校の制服は、
この学校のブランド品で特注の物で、
この学校の生徒以外は着ることができないから。
ガヤガヤー。
学校の校門前で彼が出てくるのを待っていると、たくさんの生徒で溢れかえってくる。
これじゃあ、どこにいるかわかんないよぉ
思わず目を細める。
ひとり、呟く。
会って、何を話すとかそんなの決めてないけど。
とにかく、会いたいの。
会って、目を見て、
彼の声を、耳で聞いてみたい。
彼のすべてをこの体で感じてみたい。
大きく深呼吸して、
もう一度、息をのみ、
前を向いた。
ヒビビッ!と電流が体中に流れた感じ。
今まで感じたことのない痛みが体全身に走った。
たくさんの女子たちに腕を捕まれ、
嫌そうに顔をひきつらせている男子生徒。
見つけた……
大声で彼の名前を呼ぶ。
ずっと、ずっと、
呼んでみたかった彼の名前を
今、初めて口にした。
それだけで嬉しくて顔がニヤケてくる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。