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第1話

お誘い
69
2017/12/05 13:43
 白くて綺麗で、手に触れるとすぐに消えてしまうようなはかない雪が、しんしんと降り積もっていく。はぁ、と息を吐くと、白い空気

が空中に出ては消えてゆく。季節は十一月。まだ冬本番ではないのにこの寒さで、一月や二月には耐え切れずに凍えてしまうのでは、と

毎年思わされる。

 高校に入って二回目の冬。私、半田友香は先日、高校一年生の時から付き合っている初めての彼氏の相田優良と、付き合って一年目を

迎えたのだ。

 その彼氏の優良とは、高校に入る前の中学生からの付き合いで、ずっと前から好きだったのだが、なかなか思いを伝えられずにいた。

だから、優良から告白されて、付き合うことになって、すごくうれしかった。

 
 だけど…付き合った後も変わらずに友達みたいな感じで、全く恋人らしいことができていない。本当は、キスとか色々してみたいけど

もし優良に嫌だって拒否されたらどうしよう…とか、色々考えてしまって、未だに言い出せないままでいる。

 どうやったら、もっと恋人らしくなれるのかな?
相田優良
おはよう、友香。
半田友香
わ!優良!?もう、後ろから突然音もなく来ないでよ!心臓に悪い!
 そんなことを考えていると、後ろから突然優良が来た。いつも静かに背後からくるから、驚いてしまうのだ。また寿命が縮んだ気がする…。
相田優良
お前今、危なかったぞ。僕が声かけてなかったら、また犬の糞踏んでたからな。
半田友香
わ…ホントだ…助けてくれてありがとう…
 昔からよく犬の糞を踏んでしまいそうになるから、優良にはいつも助けてもらっている。昔からドジだからかな…。
相田優良
そういえば、そろそろ毎年恒例のクリスマスパーティーがあるんじゃないか?今年はどんな出し物するんだろうな。
 クリスマスパーティー?何それ?
半田友香
何だっけ?それ?
相田優良
忘れたのか?ほら、去年もやったじゃん。それぞれのクラスでお店出して、最後にダンスするやつ
半田友香
あぁ!あれか!去年楽しかったよね~!佐藤のメイド姿全然似合ってなくて、面白かったな~
相田優良
前田は割と似合ってたよな。普通に可愛かった。
そうだ、思い出した。確か、クラスでそれぞれやりたいお店出して、午後七時ぐらいからダンスパーティーが始まるんだったっけ。

ダンスは強制じゃなくて、好きに男女二人でペアを組んで、パーティーの間ずっとペアは一緒に居なければならないってルールが――


 ――ってもしかして、これをきっかけに優良と恋人らしくなれるのでは?

 そんな考えが頭によぎったが、そういえば、去年もそんなことを考えていて、優良をダンスに誘おうとしたけど、結局誘えなかった

事を思い出す。

 …今年は、頑張って誘ってみようかな…


 -そう、今年こそ、



相田優良
なぁ、友香
半田友香
ねぇ、優良
相田優良
!あ、ごめん、被ったな。お前から言っていいぞ
半田友香
え、いやいいよ!優良から言いなよ!
びっくりした…。まさか言うタイミングが被るとは思ってなかった。…でも、何だかちょっと安心したような気がする。

言い出す気は今のでそがれちゃったけど。
相田優良
じゃあ、言わせていただきます
半田友香
なぜ敬語
相田優良
何となく
なぜ敬語で話し始めるのだろうかと不思議に思ったが、優良はたまによくわからない行動をするので、気にしないことにした。

 でも何だろう?少し改まった雰囲気だけど。
相田優良
今年もさ、先生がダンスパーティーやるって先生が言ってたんだけど
半田友香
うん
相田優良
それでさ、そのパーティーでペア組んで、一緒に踊らない?
  …え?ダンス?一緒に?優良と?
半田友香
……………??あ、うん!いいよ!うん、踊ろう!
 急な出来事に、頭がちよっっっっと追いつかずに返事をしたので、声が裏返ってバカみたいな返事をしてしまった。

今のでまた寿命が縮んだ気がするが、優良も私と同じことを考えていたんだと思うと、少しうれしかった。

同時に、今年こそは私から言おうと思っていたのに…と気を落とした。…だけど、


 ――これで、やっと恋人らしくできるのかな――?

そんな期待をしながらも、やはり少し不安なクリスマスパーティーの当日を迎えようとしていた。

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