白くて綺麗で、手に触れるとすぐに消えてしまうようなはかない雪が、しんしんと降り積もっていく。はぁ、と息を吐くと、白い空気
が空中に出ては消えてゆく。季節は十一月。まだ冬本番ではないのにこの寒さで、一月や二月には耐え切れずに凍えてしまうのでは、と
毎年思わされる。
高校に入って二回目の冬。私、半田友香は先日、高校一年生の時から付き合っている初めての彼氏の相田優良と、付き合って一年目を
迎えたのだ。
その彼氏の優良とは、高校に入る前の中学生からの付き合いで、ずっと前から好きだったのだが、なかなか思いを伝えられずにいた。
だから、優良から告白されて、付き合うことになって、すごくうれしかった。
だけど…付き合った後も変わらずに友達みたいな感じで、全く恋人らしいことができていない。本当は、キスとか色々してみたいけど
もし優良に嫌だって拒否されたらどうしよう…とか、色々考えてしまって、未だに言い出せないままでいる。
どうやったら、もっと恋人らしくなれるのかな?
そんなことを考えていると、後ろから突然優良が来た。いつも静かに背後からくるから、驚いてしまうのだ。また寿命が縮んだ気がする…。
昔からよく犬の糞を踏んでしまいそうになるから、優良にはいつも助けてもらっている。昔からドジだからかな…。
クリスマスパーティー?何それ?
そうだ、思い出した。確か、クラスでそれぞれやりたいお店出して、午後七時ぐらいからダンスパーティーが始まるんだったっけ。
ダンスは強制じゃなくて、好きに男女二人でペアを組んで、パーティーの間ずっとペアは一緒に居なければならないってルールが――
――ってもしかして、これをきっかけに優良と恋人らしくなれるのでは?
そんな考えが頭によぎったが、そういえば、去年もそんなことを考えていて、優良をダンスに誘おうとしたけど、結局誘えなかった
事を思い出す。
…今年は、頑張って誘ってみようかな…
-そう、今年こそ、
びっくりした…。まさか言うタイミングが被るとは思ってなかった。…でも、何だかちょっと安心したような気がする。
言い出す気は今のでそがれちゃったけど。
なぜ敬語で話し始めるのだろうかと不思議に思ったが、優良はたまによくわからない行動をするので、気にしないことにした。
でも何だろう?少し改まった雰囲気だけど。
…え?ダンス?一緒に?優良と?
急な出来事に、頭がちよっっっっと追いつかずに返事をしたので、声が裏返ってバカみたいな返事をしてしまった。
今のでまた寿命が縮んだ気がするが、優良も私と同じことを考えていたんだと思うと、少しうれしかった。
同時に、今年こそは私から言おうと思っていたのに…と気を落とした。…だけど、
――これで、やっと恋人らしくできるのかな――?
そんな期待をしながらも、やはり少し不安なクリスマスパーティーの当日を迎えようとしていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。