ざわざわと、人が虫のように出す騒音が、いつもより頭に響く。普段はこんなにうるさくないけど、今日は特別なのだ。
だって、今日は皆がずっと楽しみにしていたクリスマスパーティーだから。
まぁ、クリスマスパーティーといっても、文化祭のようなものなんだけど。
去年も同じようにクリスマスパーティーがあって、友達と一緒に十分楽しんだけど、今年は少し違う。
なぜなら、去年誘うことができなかった彼氏と一緒に、一日中楽しむことができるからだ!
皆が楽しみにしていた以上に、私は今日という日を楽しみにしていて、同時に緊張もしている。
パーティーで普通全然緊張なんかしないけど、今回は優良と恋人らしくできるかもしれないチャンスだから、この日のために
どこのお店を回ろうかとか、どうやったら相手をドキドキさせることができるのかとか、色々考えて計画してきた。
もちろんパーティーは全力で楽しむけど、本来の目的である「恋人らしくする」という任務も達成しなければならない。元々、
それが目的で誘おうと考えていたのだから。
――やっと優良と友達以上になれる――
そんな思いを抱いて、この一か月間を過ごしてきた。
そしていま、一カ月も前から準備してきたクリスマスパーティーが始まった。
待ちに待ったクリスマスパーティー。早速優良といろんなお店を回りたいところだけど、その前に自分のクラスのお店を管理しない
いけない。パーティーだからって、遊んでばかりはいられないのだ。
お店があるからこそ楽しめるんだし、そのお店は生徒自身が回さなきゃいけないしね。
さすがに、自分だけがサボってクラスの皆に迷惑はかけたくない。
ちなみに、私のクラスのお店は「手作りクリスマス」というお店で、名前の通り皆で小さなクリスマスにちなんだ可愛い小物を作り
安い値段で売ったり、お客さん自身が小物を作ったりできるお店。小物の準備が大変だった分、いいものができたと思う。
今は午前十時。まだ始まったばかりだ。店番は朝組と昼組との交代制で、昼組との交代は13時だから、朝組の私はそれまで
頑張って自分の仕事をしなくちゃいけない。
優良も朝組だけど、お店に結構人が来てるから、喋る余裕はなさそう…。
(早く一緒にあそびたいなぁ…)
あ、いけないいけない。今はお店を回すことに集中しないと。優良と遊ぶのは後だ。
…でも、恋というものはどうやら厄介なもので、考えないようにすればするほど、相手のことを考えてしまうものなんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!