夕焼け小焼けを口ずさんで 並んだ小道に映る影踏みして帰ろうか
泥だらけの白シャツそのままに 家に飛び込むんだ
「 今日の夕ごはんはなにかな? 」
いろんなにおいが ふわふわとぼくに教えてくれた
大好きなハンバーグの 夕ごはんのにおい
お父さんとおじいちゃんの お酒のにおい
おばあちゃんの湯飲みの お茶のにおい
「さぁさ手を洗ってらっしゃい」と 笑ってる
……お母さんのにおい
思い出したのかい? 忘れていたんだね…
”すき”が詰まった 僕の家のこのにおいを
一人じゃ空気って どんなにおいもしないこと
今ならば わかるの
あの日には ぜんぶあるの
…あの日には ぜんぶあるの
今になって やっと解るの
”ただいま”って 声にこんなに温度があること
大好きな人のにおい。
大好きなごはんのにおい。
大好きな季節のにおい。
だいすきな……
…あと、幾つ数えていけるかな…?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!