第120話

【詩】当て馬ヒーロー
29
2021/03/24 12:49
君がいなくなった夜から

どれくらいだ


どれくらい経ったかってどうだっていいや

君がいないことに変わりはない


なんで出会ったりなんかしたんだ

放っておいてくれりゃよかったんだ

優しさなど知らなければ

月が綺麗だなんてこと 知らずにいられたのに


君にとっちゃ

どうだっていい一人の脇役なんだろ

脇役ながらに役にたちたいと思ってたんだ



当て馬だって言われたって

君のヒーローになりたかった


君に幸せになって欲しい

それは違(たが)わないよ


だけどそれは

ぼくが幸せにしたかったのさ



当て馬でいいなんて

そんなの見栄っ張りだ

ほんとは気づいて欲しかったよ

この手を握り返して欲しかった



幸せな君の瞳には映るはずもない

歴史の向こうに葬られたぼくの影は


やがてこの言葉さえ塵となるだろう


届くことの無いまま




いっそ


静かな灰となって


君の上に祝福をもたらしますように

プリ小説オーディオドラマ