姉の顔になった私。
私の曖昧な説明によって両親が導き出した答え、
「姉が私に顔をさずけてくれた。」
両親の考えは間違っていました。
私は姉の顔を『奪った』にすぎなかったのです。
私が最初に顔を奪ったのは実の姉でした...
顔の出来た私は念願の外出ができるようになりました。
公園で遊び、買い物に行き、ドライブにも出かけました。
両親は私の顔で悩むことはなくなりました。
しかし、その頃から私に不思議な事が起こり始めました。
何故か生まれる前の記憶があるのです。
まだ私が母のお腹にさえいない時に流行ったテレビの内容や、両親の会話、行ったことのない場所、会ったことの無いはずの祖父母の顔...
様々な記憶が私にはありました。でもその記憶か私にあるのは有り得ないことです。
何故私にこんな記憶があるのか、その時5歳になった私はある記憶で全てを悟りました。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。