顔を奪う、と言っても姉の顔になったのは
意図的なものでは無かったため、
方法が明確なわけではありませんでした。
それなのになぜだかあの時の私は自信に満ちていました。自分が人の顔を奪えると信じて疑わなかったのです。
誰の顔をもらおうか、校区外に出て私は顔を
物色し始めました。
私がまず目をつけたのは20代前半の
サラサラな黒髪が目を引く美人の女の人。
その人の目を真正面からじっと見つめました。
しかし姉の時とは違い、顔に異変は起こりませんでした。結局その女の人不思議そうな目で私を見て、足早に去っていきました。
死んだ人の顔しか奪えないのか。
写真からしか奪えないのか。
それとも自分との関わりが皆無なのか。
その他にも原因が沢山頭に浮かびます。
私は大人を諦め、同年代の子から奪おうと考えました。
まだ朝早かったので、小学生が沢山通ります。
私は友達を待つふりをして奪えそうな顔を探し始めました。
しかしどの子で試しても、あの時の顔の変化はありませんでした。小学生が段々いなくなると、私は途方に暮れました。
どうしよう
このままでは私の顔がなくなってしまう。
あんなにあった自信もほとんど無くなっていました。
学校に行く気には到底なれず
私があの子に目をつけたのは、偶然のことでした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!