お屋敷の中の玄関は、すごく広かった。
「お帰りなさいませお嬢様」
そう言って優しそうなお婆さんが
出てきた。
「安藤、早苗を着替えさせなさい。
随分とふざけた服を着ている
みたいだから。」
サナのお母さんは私を見ながら
冷たい口調でお婆さんにそう言った。
「かしこまりました奥様。」
そう言ってお婆さんは私を服の
沢山ある部屋に連れていった。
「お嬢様がいなくなったと聞いて
安藤はとても驚きました。」
黒い、サナの着ていたのと似たワンピース
を私に着せながらお婆さんはそう言った。
「...ごめんなさい」
力無くそう言った私の頭を、お婆さんは
そっと撫でてくれた。
「私になど謝ることはありません。」
そう言いながら。
そのまま広いリビングに連れていかれると、
そこにはサナのお母さんが待っていた。
「さあ、どうして今日あんなことをしたのか
話しなさい早苗。」
「ごめんなさい...」
私はどう答えていいかわからず、ただ
謝った。
「その程度で許せる訳が無いでしょう」
パンッとサナのお母さんは私の頬を
平手打ちした。
「...」
痛みをこらえ、私はうずくまった。
「立ちなさい」
そう言われ、ヨロヨロと立ち上がる。
サナのお母さんは容赦無く私を打ち続ける。
サナのお母さんは何故私をこんなにも
殴るのか、サナも殴られていたのだろうか。
そんなことを考えながら、私は黙って
サナのお母さんのされるがままに
するしかなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。