ふと目を覚ますと、私は黒いベットに寝ていた
咄嗟に自分が今いるのはどこだ?
混乱するが痛む身体に記憶が蘇る。
今の私はサナ。
ここはサナの部屋。
身体はサナのお母さんに殴られたから痛む。
私は...██はもういない。
そう自分に言い聞かせる
身体は寝る前よりも熱を持ち、痛む気がする。
壁にぽつんと掛けられた時計を見る。
8時
それが午後を示しているのか、午前なのか
私にはわからなかった。
無造作に置かれたピンクのランドセルを
抱え、抱き締める。
どのくらいそうしていただろう。
10分くらいな気もするし1時間ぐらいな気もする。
キィ...
控えめな音を立てて部屋のドアが開かれる。
「早苗。入るよ。」
安藤さんの声じゃない。若い、男の人の声。
私はいっそう強くランドセルを抱き締め
身構える。
ひょこっとドアの隙間から顔を出したのは
ふわっとした茶髪の男の子だった。
「早苗、大丈夫?」
なんと言えばいいものかと私が黙っていると、彼は苦笑いした。
「そんなに兄ちゃんが嫌い?」
この人はサナのお兄さんだったのか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。