サナの兄が私の顔を見て首をかしげた。
「どうした?今日は喉でも潰された?」
その一言に、ぶわっと鳥肌が立つ。
尋常じゃない嫌悪感。
殴られた箇所が更に痛みを増す。
頭も痛い。
ガンガンという頭痛とズキズキという
体の痛み、心臓のバクバクという音、
うるさい、うるさい、うるさい、
「うるさい!!!」
自分の叫び声に自分で驚く。
そしてはっとしてサナの兄を見た。
彼はきょとんとした顔でこちらを見ている。
そしてポツリと、
「なんだ、声出るじゃん」
言い終わるや否や、つかつかと私に近づいてきた。
「ご飯の時間だよ、早く降りてきな?」
固まる私の耳元でそう言うと、ニヤッとして
サナの兄は私の部屋を出ていった。
私はサナのお母さんに殴られた時よりも
強く恐怖を覚えた。
できる限りあの人には関わらないでおこう。
私は固く決心した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。