シュン「次の駅で降りる。」
あなた「え?」
西山くんはまだ私の手を離さない。
すぐに次の駅に着き、私達は降りた。
そこの駅は降りる人が少なく、駅自体にも人はいなかった。
あなた「えっと…。その、。」
シュン「どうして、急に俺から離れた。」
急な質問で、準備ができていなかった私は頭の整理が追いつかなかった。
シュン「お前も俺のことは見た目だけか。」
あなた「それは違う!」
さっきまで何も言えなかった私は反射的に言い返してしまった。
あなた「最初は、一目惚れだった。だけど、西山くんのことを無意識に目で追うようになってしまってから西山くんのいいところも悪いところも見えるようになってきたの。」
私の頭は追いつかないのに、勝手に言葉でてくる。
あなた「犬が好きで、通りすがりの犬は必ず撫でてるところとか、友達が一人でも遅れていると、待ってあげるところとか。」
西山くんは驚いた様子で私を見ていた。
あなた「逆に、女の子には厳しくって女の子が西山くんを呼んでいるのに、無視したり。色んな西山くんを発見して、西山くんからの目が離せなくなったんだよ。」
シュン「じゃあ、なんで急に離れたんだよ。」
彼女がいるくせに、悲しい顔をしている。
こういうところがズルい。
あなた「だって、西山くん彼女いるじゃん。ミカちゃんから聞いたんだからね。」
シュン「はぁぁ?いつ俺に彼女ができたんだよ。」
西山くんからは聞いたことのない大きな声だった。
あなた「だって、夏休み明けの始業式の日ミカちゃんが西山くんから告白されたって。」
シュン「それ騙されてるぞ。おれは告白なんてしてないし、今、彼女なんていない。」
じゃあ、どうしてミカちゃんはあんなうそを…。
シュン「ミカからは告白はされた。中学の頃か
ら好きだったって。でも、俺は断った。」
あなた「なんだぁ。」
一瞬にして体の力が抜けた。
安心していいのか、ダメなのか。
それでもミカちゃんには悪いけどすごく嬉しい。
シュン「勝手に離れてんじゃねぇよ。」
西山くんは私の髪の毛をクシャッと撫でた。
(ええ!?こんなのドキドキが止まんなくなっちゃうよ。)
あなた「わぁ。髪の毛が西山くんと一緒でクシャクシャになっちゃった。」
シュン「はぁ?それより、冬休みは聞いてこないのかよ。一緒にどっか行かないかって。」
あなた「聞いたってどうせ断るくせに…。」
ピタッ
西山くんは私のほっぺたを摘み、目線を合わせた。
きゅ、急にこんな甘いことをされてもどうしていいか分からなくなる。
シュン「今回は断らないでやる。だから、行きたいところを言え。」
今日は一体全体なんで日なんだ。
幸せすぎて怖い。
あなた「じゃあクリスマスの日、時計広場の前で待ってるから。ちゃんと来てよ!」
そう言い残し、私は走って階段を上って改札口を出た。
あれ以上あの美しい顔が目の前にあると気を失いそうになる。
それにしてもさっきまで冷たかったほっぺたが、摘まれたところだけあつくなっていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。