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第3話

代償
翌日の朝、あたしは淡い期待に胸を踊らせながら学校へと向かった。
教室に入り自分の席に座ると、数名のクラスメイトがこちらに駆け寄ってきた。
「おはよう」
「おはよう、姫子ちゃん!ねえねえ、聞いた?」
クラスメイトが、言いたくて仕方がないという様子で聞いてくる。
「え?なにが?」
あたしの返答にクラスメイトたちは嬉々とした表情で顔を見合わせ、実はね…と話し始めた。
「氷室くんと松本さんって付き合ってたじゃない?」
「うん」
「その二人がね、“昨日”別れたらしいの!」
「え!?」
心臓がどくどくと脈打つ。
“昨日”というと、あたしがあの『願い事叶え屋さん専用ポスト』とか言うものに望みを書いた手紙を投函した日だ。
もしかして、あれはホンモノなのか・・・?
どちらにしても、あたしにとっては大チャンスだ。
自然と口元から笑みがこぼれる。
「姫子ちゃん、氷室くん狙ってたんでしょ?チャンスだよ!」
「うん、ありがとう」
クラスメイトにお礼を言い、その場を離れる。
ずっとそこにいると、にやけているあたしを変に思う人がいるかもしれないから。















その晩のことだった。
コツコツ、と窓が軽く叩かれる。
いや、おかしい。
ここは3階だ。
誰も登ってこれないはず………
背筋が凍っていくのが分かった。
すると、鍵がしまっていたはずの窓が、一人でに開いた。
あたしは身構える。
窓の外から現れたのは・・・ーーー


『どうもこんばんは!この度は“願い事叶え屋さん”をご利用頂き、誠にありがとうございます!』
「え……!?」
化け物や幽霊などが襲ってくるのかと思いきや、予想に反して出てきたのは、あたしより少し下くらいの少女だった。
「おん……なのこ……?」
『初めまして!ワタクシ“願い事叶え屋さん”店長のカナエと申します!』
少女ーーカナエーーはカールした紺色の長髪をなびかせながらくるりと1回転すると、ピッと笑顔で敬礼をした。
「えっと、あなたが店長なの?」
『はい!』
元気良く返事をするカナエには申し訳ないが、全くもって店長には見えない。
「……それで、その店長さん?がなんでここへ?」
『あっはい!今日はですね!』
カナエはポンと手を打ち、肩にかけているショルダーバッグをガサゴソと探る。
『あ、これですね。えっと、先日お望み頂いたお願い事の代償を受け取りに来ました!』
なるほど、納得した。
あの紙の裏にかいてあった“代償”を、カナエは受け取りに来たのだ。
「えっと、カナエ。その事なんだけど……」
『はい?なんでしょう?』
「その……ツケにしておいてもらってもいいかしら?」
あたしが申し訳なさそうな声色で言うと、カナエは慣れているのか、
『あ、ツケですね~了解しました!』
と淡々として言った。
『それじゃあ、ワタシはこれで!』
「あ、ちょっと待って!」
そういって出ていこうとしたカナエの袖口を掴み、止める。
『えっと、どうしました?』
「ご、ごめん。いや、その………願いを叶えてほしくて」
あたしが言った瞬間、カナエはパアアッと目を輝かせてこちらを見た。
『はい!はい!願い事ですね!なんでしょうか?!』
「えっと、その………」
相変わらずカナエはキラキラした目でこっちを見ている。
「……雄大くんがあたしを好きになるようにしてほしいの」
『了解です!任せてください!』
ドンッとカナエは自分の胸を叩くと、今度こそ窓の外へと飛んでいった。
あたしはしばらくそれをボーッと見つめて、窓を閉めた。
空には三日月が輝いていた。