高校生活最後の夏の大イベントが終わった。まあ高校生活っつっても、そんなに思い入れがあるわけじゃねぇ。それでも、なんか終わっちまった感が半端なかった。
さっきまでガヤガヤしてた店の出てる通りは、もうただの人間の流れに変わって、灯りが消え始めてる。あなたもそれを見つめて、なんか寂しそうに見えた。
また俺も、珍しく寂しいかもしれない。もっとあなたとは一緒にいたいなんて、我ながら女々しい発想をしていた。
言った後に恥ずかしくなってきた。自分でも最近キャラぶれじゃねぇけど、らしくねぇっつうか…とにかく俺が変だと思う。
調子が狂いそうなのを誤魔化すように、俺は足早に歩き出した。いつもみたいにあなたをちょっと不機嫌にさせるような言葉を吐いて。……なのに、後ろからの文句も反抗も無かった。それに加えて、追いかけてくるような足音もしない。
後ろは見なかった、必要ないと思ったから。
それでも代わりに聞こえたのは、軽い何かが落ちる音と、一瞬吹いた風が揺らす葉の擦れる音だけだった。
振り返って、絶望した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。