第19話

消えた
476
2019/05/03 13:02
高校生活最後の夏の大イベントが終わった。まあ高校生活っつっても、そんなに思い入れがあるわけじゃねぇ。それでも、なんか終わっちまった感が半端なかった。
牙河羅
牙河羅
…終わっちまったな、花火
あなた

…だね

さっきまでガヤガヤしてた店の出てる通りは、もうただの人間の流れに変わって、灯りが消え始めてる。あなたもそれを見つめて、なんか寂しそうに見えた。
牙河羅
牙河羅
この後どうするよ
あなた

え、帰らないの?

牙河羅
牙河羅
いやそうだけど…まあ、そっか
また俺も、珍しく寂しいかもしれない。もっとあなたとは一緒にいたいなんて、我ながら女々しい発想をしていた。
牙河羅
牙河羅
送るわ
あなた

え、いいよ。日も沈んで冷えてきたし

牙河羅
牙河羅
そうか?俺寒くねぇけど。つか逆にドキドキしっぱなしであつい
あなた

…ほんと、牙河羅って素直だよね

牙河羅
牙河羅
あっ…
言った後に恥ずかしくなってきた。自分でも最近キャラぶれじゃねぇけど、らしくねぇっつうか…とにかく俺が変だと思う。
牙河羅
牙河羅
とにかく!早く帰んぞ、あなたの親も心配するだろうしな
あなた

っ………

調子が狂いそうなのを誤魔化すように、俺は足早に歩き出した。いつもみたいにあなたをちょっと不機嫌にさせるような言葉を吐いて。……なのに、後ろからの文句も反抗も無かった。それに加えて、追いかけてくるような足音もしない。
牙河羅
牙河羅
おい、早く来ねぇと置いてっちまうぞー
後ろは見なかった、必要ないと思ったから。
それでも代わりに聞こえたのは、軽い何かが落ちる音と、一瞬吹いた風が揺らす葉の擦れる音だけだった。
牙河羅
牙河羅
………あなた?
振り返って、絶望した。

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