クリスマス、午後2時。
桃と待ち合わせして、ショッピングモールで服や雑貨を見ていた。
振り返った直後、パチンッと瞼の近くで何かが弾けるような音がした。
すぐに手鏡を向けられ、私は音の正体がわかった。
緑のハットをかぶって見せてきた桃にそう呟く。そして、二人で声を上げて笑った。
そうやって、私たちはいろんなところでいろんなことをして楽しんだ。
やがてイルミネーション点灯の時刻が迫ってきた。
私たちは集合場所だった広場に戻って、広場中央の大きなクリスマスツリー周辺で談笑しながら待った。が、もうすぐ時間という時になって突然桃が言った。
あっという間に桃は人混みに紛れ消えていって、苦笑というか、感心してしまった。
トイレ混んでないといいけど……。早く戻ってきますように。一人でライトアップ迎えるの辛い。
手に息を吐きかけ、寒さを誤魔化す。ふと、後方から聞き覚えのある声が風に乗って流れてきた。
大慌てで後方の人混みを確認する。
その中に――――まさかの、吉沢と坂宮くんがいた。
はっ……はぁあ!?なんで二人が!?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!