第15話

缶ビールに。
1,816
2017/12/28 04:31
テオくん目線
テオくん
はぁぁ………
大きなため息が俺の口から出た。

ダメだ。
色々と悪い方に考えてしまう…。
俺は今日あいつに
嫌な思いをさせてしまったかもしれない。

あいつはどこか傷ついた顔をして
部屋から出ていった。
テオくん
見つかった…か
しまってあった媚薬を
あいつが手に取っていたのが見えた。

まさか自分に盛られたとは考えないだろうが
万が一、感ずかれたらおしまいだ。

"もっと"距離を置かれるかもしれない。
(今度こそ嫌われる………)


そんな風に思ってしまう。

思考回路はもうぐちゃぐちゃだ。
いや………
もう、嫌われてるのかもしれない…。

あいつは俺と目を合わせないようにしてくるし
会話もしないように俺を避けている。

しかも
明日には帰らなければいけない。

またあいつと離れなきゃいけないのかよ。


毎日会えたとしても、
毎日笑いあえたとしても、
やっぱり距離は感じていた。

今回はそれが耐えきれなくなってやったことで…
テオくん
っ………
外の空気を吸ってこようと
立ち上がってドアを開けた。

撮影部屋にスマホがあったはず…
テオくん
…………
あいつがテーブルに突っ伏していた。

あいつの側には缶ビールが空になって
3本ぐらい倒れてた。

(酔って寝たのか?)


起こさないようにそっと
足音をたてないようにして近づいた。
じんたん
はぁ、はぁ……
息が荒い。

熱でもあるのだろうか……。
心配になった俺は
あいつに避けられているのにも関わらず

──あいつの前髪をかきあげて額に触った。
じんたん
んっ………
やばい。
あいつが目を開けた。

息は荒いままだ。
テオくん
あ、っと…ごめん
起こしちゃっ、た?
じんたん
………
まだ意識がもうろうとしているのだろう。

上半身を起こして目を擦った。

あいつの口から
昨日と似たような甘い吐息が漏れていた。
テオくん
じゃあ俺行くから…
どこに行くと言うんだ。

俺の居場所なんてどこにもないのに……。

体の向きを変えて玄関の方へと向かおうとした…
じんたん
っ…行かないでよ!
あいつに呼び止められた。

体が固まった。

あいつは縋るようにして俺の服を掴んだ。
じんたん
テオくん離れないでっ………
じんたん
俺の事を嫌わないで………
泣き出しそうな声をあげた。
テオくん
っ…………じんたん
俺は抱きしめたい気持ちを抑えて
ゆっくりとあいつの方へ向いた。

これはどうせ
──酒のせいなんだろ。
テオくん
わかった
行かない
じんたん
っ………ほんと?
テオくん
うん
ここにいる
じんたん
…よかった
あいつは嬉しそうに
にっこりと笑った。

その笑顔に俺も口元が緩んだ。

可愛かった。

あいつを抱きしめて
可愛がって
俺のものにしたい。
あいつはまだ息が荒かった。
寝かしといた方がいいかもしれない。
テオくん
じんたん寝ときなよ
俺毛布持ってくるから…
あいつはすこし悲しそうな顔をした。

俺はあいつの部屋から毛布を取ってこようと思い、
あいつを置いて部屋に向かった。

離れない、と言っておきながら部屋を出ようとする俺はなんなんだ…。
じんたん
やだ…
俺から離れないでって言ったじゃん!
テオくん
だから毛布を取りに行くだけ…
じんたん
このまま寝れないよ…!
じんたん
俺、テオくんに嫌われないために
あいつは少し躊躇ってから
口を開いた。
じんたん
自分で媚薬飲んだのにっ………


…………えっ?

俺はあいつから放たれたその言葉を理解することに
少々時間がかかった。


(自分で媚薬を飲んだ…?)


テーブルを見ると
空き缶に隠れて
媚薬のビンが転がっているのが見えた。

だいぶ入っていたはずなのに
中身は半分以下になっていた。
じんたん
はぁっ…この熱いのって
媚薬だったんだね……?
俺に寄りかかるようにして体重をかけられた。

あいつは少し悲しげに微笑みながら続けた。
じんたん
一昨日の夜もこれだったんだよね?
多分…昨日もそうだったんでしょ?
俺はドキリとした。
昨日のことを思い出されたら今度こそ………
じんたん
テオくんってさ
あいつは俺のことを押し倒して上に乗った。

フローリングの床が冷たい。



























じんたん
俺のこと好きでしょ?

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