今さらこんなことを言っても遅いのに、ただ自分を正当化しているみたいで嫌なのに、それでも込み上げる気持ちを抑えきれなかった。
ただ謝るしかできなかった。
しゃっくりが単発的に出てしまってうまく話せない。
すこしはなれたところに座っていたサトシくんが立ち上がった。
それから、ハンカチを取り出すと涙を拭ってくれた。
柔らかい感触がくすぐったかった。
震えるような声でそう呟いたサトシくん。
最後に、また会えたらいいな、と笑いかけてくれた。
どもらずに、そう彼は言った。
わたしもコクコクと首を縦に振った。
そして、一週間後の今日、サトシくんは転校していった。
大好きなサトシくん。
転校する最後の日に、クリスマスツリーに飾るとても綺麗なガラスボールをくれた。
そう言ってさよならをした。
心の優しいサトシくん。
そんな彼がわたしはーー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!