合唱コンのクラス曲は、
“はばたこう明日へ”に決まった。
「なんか、まだ2年なのに卒業みたい〜」
って声もちらほら聞こえてきますが。
だって選択肢のほとんどが卒業っぽい曲なんだもん。
他のクラスは、“YELL”とか“この地球のどこかで”だったりする。
あ、ちなみに私達はB組ね。
「はばたこうってなんか翔みたいじゃない?」
屋上で翔とお弁当を食べている時、私は言った。
「んーそれ俺もちょっと思った。笑」
「みんなもそう思って決めたのかな。」
「それはないだろ。さすがに。」
まあ、そうか。
「俺の名前さ、空に翔び立つみたいに自由に生きろっていう意味なんだって。」
「まさに翔だね。自由だし。」
すると、
「それなんか、マイペースみたい。」
ちょっと怒った顔で翔が言う。
「ごめんごめん。良い意味でだよ。」
私は卵焼きをぱくつきながら謝る。
「あー楽しみだな。合唱コン。 俺ら絶対金賞だよな。」
翔はおにぎりを食べながらそう言う。
そのおにぎりは、私が朝作ったもの。
毎朝、翔のお弁当も作ってあげてる。
「もちろんだよ。絶対獲れるって。」
「俺もそう思う。笑」
「翔の指揮にかかってると思うけどね?」
「それも思う。笑」
昼休み終了5分前のチャイムが鳴った。
「戻るか。」
「そうだね。」
「今日も美味かった。ご馳走さま。」
「どういたしまして。」
2人並んで、屋上を出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!