昨年の夏。
「凛華、俺と付き合ってください。」
屋上に呼び出されて、翔にそう言われた。
「はい。」
幼馴染だった私達は、恋人になった。
物心ついた時から、私達は一緒にいた。
家は斜め向かい。
毎日2人で遊んで、たまに大工だった翔のお父さんがおもちゃを作ってくれたりして。
最後に作ってくれたのは、手作りのバスケットゴールだった。
「ねぇママ、翔くんのパパどこに行っちゃったの?もうすぐ帰ってくる?」
「凛華。翔くんのパパはね、お空に行ったのよ。もう、ずっと帰ってこないの。」
翔のお父さんは、私達が4歳の冬、建設現場で事故が起きて亡くなった。
翔がずっと泣いていた姿を、今でも鮮明に覚えてる。
私が守ってあげなきゃって思ったのも。
私はずっと翔のことが好きだったけど、翔が私のことをどう思っているのかはわからなかった。
だから翔から告白してくれたのは、本当に、本当に嬉しかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!