カジが思い出したように字等に問うと、
字等は少し考え、しかしやはり思い出せなかった。
何かを言いかけたカジの声をかき消すかのように、あなたが大きな声を出して字等を呼んだ。カジはそれをなんとなく予想していたかのように静かに黙った。
字等は一瞬違和感を感じたが、耳を貸してやる事にした。
確かに。
色々言いたい事はあるがまずは自分の名前を名乗っておこう。普段は簡単に名乗るのもイヤだが、命の恩人であるあなたに名前を教えないのもおかしな話だと思った。
初対面の男に対して飄々とした態度のあなたに少し腹が立つが、ここは男として耐えてやる事にした。
しかし字等はあなたを見る度に思うことがあった。
あなたは、
何かを隠している。ーーー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。