廊下を一歩一歩進む間、嫌な予感が頭を過ぎる。
「 そんなわけない でしょ、 」
不安が声に出てしまうぐらいに、
噂が頭に広がって行く。
ドキドキと脈打つ動悸を抑えるように胸を抑えながら深呼吸をして、
違う違うと繰り返しながら廊下を歩く。
やっとの思い出教室までたどり着いた。
が、 嫌な予感は的中してしまった。
「 ん、ぁあッ … 」
教室から女性独特の甘い喘ぎ声が聞こえた。
「 ッ …… 」
息を呑んで思わず出そうになった声を抑えるように口を塞いだ。
何が起こってるんだ、という疑問がグルグルと周る。
ドアにはすこしの隙間、
興味など無いと思う反面体は無意識に動き、
隙間から中を覗いた。
「 ひ、ぁ ッ !! んん ッ 、 」
「 すっごいね 、 グッチャグチャ、」
そこでは 噂の権化である片瀬 隆斗と女子生徒が熱い情事を繰り返している。
「 ッ 、 ぁ、 う … 」
その様子に思わず魅入ってしまう、
口をパクパクと動かすも声は出ず呻き声のような物が口から着いてでる。
その時、
バチり、隆斗と紺の 視界が絡む。
「 ッ !!!!!! 」
目が合ったことに驚き、ドアから離れ無我夢中で廊下を走る。
課題のノートのことなど頭に残っているはずもない。
「 ハァッ … なに、 あれ 、 」
生徒玄関前まで来れば足を止め壁に背をつけて息を整える。
頭ではグルグルと先程の事が頭を過ぎり顔が一気に熱くなるのが紺自身でも分かった。
目が合ってしまった、噂は本当だった。
そんなことばかりを考えていた。
「 … 純粋 、 」
「 んぁ、 隆斗 … ??」
「 嗚呼、ごめんね、
続き、 しよっか? 」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!