"私、松原聡子やりまーす!"
そうは言ったものの、そう簡単に台詞を覚えれるわけない。
あなた(どうしよう...)
取りあえず必死で覚えたものの、まだ完璧なのは半分までだ。
それに、
あなた「なんで、櫻井さんとハグなんかしなきゃいけないのよっ!!」
台本に書いてある、《ここでハグする》という文字が恨めしい。
櫻井「おい、出番だぞ」
あなた「えっ」
なんということでしょう!!
タイミングよく現れた櫻井さんに、青ざめる私。
あなた(どうか聞こえていませんように)
僅か10秒前に漏らした愚痴をこんなに後悔するとは。
櫻井「それで、俺とハグするのが嫌なんだ」
あなた(聞こえてた、、!)
ニコッと営業スマイルを浮かべて低い声で言ってきた櫻井さんには、恐怖しか感じない。
あなた「そ、そんなわけないです~」
あはは、と笑って見せると、櫻井さんはフン、と馬鹿にしたように笑った。
櫻井「ハグくらいで嫌とか言っているようじゃ、まだまだ"おこちゃま"だな」
あなた「....」
その一言でまたイラッときてしまう私はやっぱり"おこちゃま"なのだろうか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。