木漏れ日のシャワーが
降り注ぐテーブルで、白鳥ひめは
紅茶をティースプーンでくるくると
かき混ぜながら不意に声を出した。
少しはにかんで、如月ツバサは
ひめに目をやった。
目の前にいる、
「アイドルすぎるアイドル」
こと白鳥ひめは、まれにみぬ
美少女だ。薄いクリーム色の
長い髪、長いまつ毛に縁取られた
アイスブルーの目、白く華奢な
手足。初めて見たとき、はっと
目を奪われたのを、よく覚えている。
ふとひめが立ち上がり、
テーブルに手をついた。
まるいガラス玉のような目を
わずかに潤ませて、ひめは
ツバサの頰に手を伸ばした。
ひめは顔を曇らせ、ゆらりと
ツバサから手を離した。
ついに、ひめの目から
大粒の雫が零れ落ちた。
嫌い。嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い。
ぐさり。と心に深く、その言葉は
突き刺さった。何度も頭の中で
リピートされる。頭を鉄の棒で
殴られた感覚に、ツバサは
陥った。
ピロリロリン♪
不意に、ツバサのアイカツ!モバイル
が鳴った。見ると、坂本ありさ
から、「お仕事の依頼が来ています、
至急劇組までお願いします」
と表示されていた。
ひめは珍しく取り乱して、
ツバサを睨みつけてから
だっと駆け出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!