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第1話

〜episode one〜
1,236
2017/12/14 12:07
ひめ
ひめ
ねーぇ、ツバサ?
ツバサ
ツバサ
ん、なに?
木漏れ日のシャワーが
降り注ぐテーブルで、白鳥ひめは
紅茶をティースプーンでくるくると
かき混ぜながら不意に声を出した。
ひめ
ひめ
わたしたち、こうやって
仲良くなるまで、どのくらい
かかったかしら
ツバサ
ツバサ
…?さあ…なんで?
ひめ
ひめ
なんでもないの…
ただ、なんとなくよ
ツバサ
ツバサ
そうだな、ざっと…
出会ってから…3…ヶ月?
ひめ
ひめ
あら、そんなに短かった?
ツバサ
ツバサ
そう言われると自信が
ないな…わからないよ
少しはにかんで、如月ツバサは
ひめに目をやった。
目の前にいる、
「アイドルすぎるアイドル」
こと白鳥ひめは、まれにみぬ
美少女だ。薄いクリーム色の
長い髪、長いまつ毛に縁取られた
アイスブルーの目、白く華奢な
手足。初めて見たとき、はっと
目を奪われたのを、よく覚えている。
ひめ
ひめ
だってツバサったら、
わたしが話しかけてもずっと
つんとしていたんだもの。
わたしは、ツバサと
仲良くなりたくて
仕方がなかったのに
ツバサ
ツバサ
いや…あれはその…
ふとひめが立ち上がり、
テーブルに手をついた。
ひめ
ひめ
ねえ、ツバサ…
ツバサ
ツバサ
ひめ
ひめ
わたしのこと、
嫌いなの…?
ツバサ
ツバサ
?!
まるいガラス玉のような目を
わずかに潤ませて、ひめは
ツバサの頰に手を伸ばした。
ひめ
ひめ
ねえ、そうなの?
だからわたしを避けてるの?
だからあこちゃんや
ゆりちゃんや
ありさちゃんばっかりと
お話しするの?
ツバサ
ツバサ
え…そん、な、つもりは…
ひめ
ひめ
嘘、嘘だ
ひめは顔を曇らせ、ゆらりと
ツバサから手を離した。
ひめ
ひめ
ツバサって、本当に
わかりやすい。
嘘がすぐにわかっちゃうわ。
劇組なのに
ついに、ひめの目から
大粒の雫が零れ落ちた。
ひめ
ひめ
そんなツバサは、
嫌いよ
ツバサ
ツバサ
…!!
嫌い。嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い。
ぐさり。と心に深く、その言葉は
突き刺さった。何度も頭の中で
リピートされる。頭を鉄の棒で
殴られた感覚に、ツバサは
陥った。
ピロリロリン♪

不意に、ツバサのアイカツ!モバイル
が鳴った。見ると、坂本ありさ
から、「お仕事の依頼が来ています、
至急劇組までお願いします」
と表示されていた。
ツバサ
ツバサ
悪い、仕事の依頼だ。
劇組に、行かなくちゃ…
ひめ
ひめ
ほら、またそうやって。
わたしと向き合ってくれないの。ねぇ。もっとちゃんと、
わたしのこと、見て…よ…!
ツバサ
ツバサ
ひめ!
ひめは珍しく取り乱して、
ツバサを睨みつけてから
だっと駆け出した。
ツバサ
ツバサ

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