大量のチョコレートマフィンを
平らげると、ひめはうつらうつら
してきた。それと同時にさっきの
不安が蘇って、また泣きたくなった。
気がつくと、ひめは夜空に
コアラのように抱きついていた。
ずるずると抵抗するひめを
引きずりつつ、夜空はS4の寮
から学園に向かって歩き出した。
ひめは夜空の後ろに
ぴったりくっついて出てこようと
しない。
今言う?それ今言う?!
と突っ込みたいほどの
空気の読めなさ。
2人が出ていったレッスン室は
いやにがらんとした感じがした。
その態度に、さすがのツバサも
かちんときた。
いつもよりもっと低い声音に、
ひめは一瞬びくっとしたが、
すぐにキッと目に鋭い光を
灯した。
そう吐き捨てて、ひめは
また泣いた。手で顔を覆うことも
せずに、大きな目でツバサを
睨みながら。
するとひめは大きく目を
見開いた。ツバサの目も潤んで
いたから。
どちらからともなく、
気まずくなって、根負けした
ツバサがレッスン室を飛び出した。
ひめもまた、引き止めようと
伸ばしかけた手を思い留まり、
胸の前に戻した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。