第5話

〜episode five〜
614
2017/12/15 23:20
ひめ
ひめ
…なんだろう今の電話
ミュージカルのミーティング?
なんで?3時までには劇組?
どういうこと?いつお客様は
いらっしゃるの?
ひめの頭ははてなマークだらけ
だった。
ひめ
ひめ
それにしても今のは
ないと思うわ。
ほんと、冷たいんだから…
まだ涙がとまらない。
3時まで何をしようかしら、と
目からぽろぽろ雫を零しつつ、
時計を見た。…まだ2時。
その時、レッスン室のドアが
ガラリと開いた。
ゆめ
ゆめ
…あれ?!ひめ先輩?!
…どうしたんですか?!
ひめ
ひめ
…ゆめちゃん。
なんでもないの、なんでも…
ゆめ
ゆめ
なんでもなくないから泣いてるんですよね?!
…一体何があったんですか?
ひめ
ひめ
ふふっ。ツバサと喧嘩
したの。それだけ
ゆめ
ゆめ
へぇ〜、お2人も
喧嘩するんですね
ゆめはジャージ姿だった。
レッスンをしようと
入ってきたのだろう。
赤い大きなリボンを揺らして
ゆめはぺたりと床に座った。
ゆめ
ゆめ
お話、聞きますよ!
にこっと、ゆめは笑った。
ひめ
ひめ
…ありがとう、あのね、
まず最近ツバサがわたしを
避けてるみたいなの。
いっつもゆりちゃんとか
ありさちゃんとか
あこちゃんと一緒にいて
わたしと全然喋って
くれなくて!この間だって
わたしが手を振ったのに
スルーされちゃったし、
“星々の集い”の時もわたしに
お茶を淹れさせて
くれないし、だいたいツバサは
いっつも1人で抱え込んで
わたしがいるのに気がつかなくてうにゃうにゃうにゃ〜…
だんだんとひめは
エスカレートしてきたようで、
もうなんだか新婚夫婦の
ノロケ話を聞かされている
ようだった。
ひめ
ひめ
お風呂入った後とか
濡れたタオルとか
そのままの時あるし、
わたしがやるって言ってる
のに危ないとかなんとか
言って火使わせてくれないし、
りんごむくときその持ち方で
大丈夫か、手を切らないか
とかわたしより心配してるし、
大体ツバサはみんなのこと
心配しすぎなのよ。
自分のこともやればいいのに、
いっつも人に優しくて、
ツバサの笑顔ってわたし
だけのものじゃないの。
…それがつまらないのよね
ふぅ、とひめはため息を
ついた。
ゆめ
ゆめ
ひめ先輩って、ツバサ先輩の
ことが大好きなんですね!
悪戯っぽく、どこか
寂しく、ゆめは笑った。
ひめ
ひめ
…そうね、そうなのよね。
ツバサには言ったこと
ないけど、多分わたしは、
ツバサの大大大ファン
なのよね
ゆめ
ゆめ
それなら、ファンレター
を書いたらどうですか?
ひめ
ひめ
ファンレター…?
わたしが、ツバサに?
ゆめ
ゆめ
そうです!
大好きっていう気持ちと
仲直りしたいっていう
気持ちを伝える、
ファンレター!
ひめ
ひめ
…いいかも、
書いてみるわ!
ありがとう、ゆめちゃん!
ゆめ
ゆめ
お役に立てて
何よりです!
決心したように
走り出したひめを
見送って、1人ゆめは
立ち尽くしていた。
ゆめ
ゆめ
いいんだよ。
ひめ先輩がツバサ先輩が
好きなら…それで
そう言って寂しげに
笑うのだった。

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