プリ小説

第24話

ワケあり
「へぇ、覚えててくれたんだ、僕の名前」
ロキは、嬉しそうに歩み寄った。
否、フレイと呼ぶ方が正しいのだろうか───
対するバルドルは、警戒心を剥き出しにしながら真穂を庇うように手を伸ばしていた。
「バルドル、さん…フレイって…」
「真穂さん、それはまた後で。今はともかく───」
それを聞き終える前に、真穂の意識は遠のいた。
(え───?)
呼び戻そうとしても、それに逆らえず深くまで引き摺り込まれた。

そして次の瞬間、真穂の身体にある意識はオーディンだった。
バルドルとロキはその変化を瞬時に気付いた。
「オーディン、何故、貴方が…」
「説明はまた今度だ。それより今は───」
オーディンは、憎悪の瞳でこちらを見るロキを見詰めた。
「変わり果てたな、フレイ───否、今はロキと呼ぶべきか」
「やだなぁ、フレイで良いのに。ロキなんて、仕方無く嫌々名乗ってる名前なんだからさ」
笑顔でこう言うが、その瞳は笑っていない。
オーディンはそれに屈する事無く、1歩前へ出た。
そして聖剣を、ロキに向ける。
「お前のあれからの事情は把握している。堕ちたものだ」
「ははっ、誰のせいだと思ってんの?」
ロキは次の瞬間に、オーディンの首に右手を伸ばしていた。
それをバルドルが庇う前に、オーディンは聖剣をロキの右腕に振り下ろした。
斬られる寸前でロキは避けるも、衣服は切断された。
そのままオーディンは聖剣から鎖を現し、ロキを捕えんと操る。
だがロキの口から吐き出された業火にそれは溶かされた。
「今日の所はこれくらいで良いや。まぁ、いずれまた会おうよ」
ロキはそう言い、ひらひらと手を振ると窓から空へと飛び立った。

「待て!!」
追おうとするバルドルを、オーディンが止めた。
「オーディン…」
「今は真穂の安全が第一だ。お前なら事情は分かるだろう」
「え、ええ」
「それより…」
オーディンは聖剣を仕舞うと、頬を膨らませて、冗談混じりに不満を表した。
「イヴだというのに、真穂は何をやっているんだ?人間に裁きを下しに行かないとは…オーディンとしてまだまだだな」
そして横目でバルドルを見た。
気まずそうに堅苦しい表情をしているバルドルを見て、大きく溜息を付く。
「…ここは少し笑う所だぞ」
「えっ、すいません…」
「まぁなんだ、弟の事で不安はあるだろうが…たまには他人を頼れ」
「オーディン…」
と、すぅっとオーディンの意識が遠のいた。
その凛々しい笑みを浮かべたまま、意識は真穂へと戻ってゆく───



「…あれ、ばっ、バルドルさん!!わ、私───」
意識を取り戻した真穂は、慌てて辺りを見た。
「大丈夫です、ロキは去りました」
「そ、そうですか…じゃなくて、フレイが、ロキって───」
その言葉に、バルドルは小さく溜息を付き、項垂れた。
そして、意を決した様に真穂を見詰める。


「お話します───ロキの…フレイの過去を」

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