プリ小説

第34話

挨拶
「…あれ?」
真穂が気付くと、そこは真っ暗な場所だった。
冷ややかな風が、真穂の肌を撫でる。
「ここ、は…?」
真穂は恐る恐る、1歩足を踏み出した。
すると───
「きゃ───!?」
その地面は真穂を飲み込む様に、ずるりと崩れ落ちた。
崩れ落ちる地面と共に下へと落ちていく真穂。
それと同時に、意識も遠のいてゆく。
(マズイ!!)
真穂は必死に意識を集中させ、背中の翼を広げた。
翼を物凄い勢いで羽ばたかせ、真穂は上へと飛んでゆく。


と、束の間。
真穂の辺りに、真っ暗な空が広がった。
そして次の瞬間には、翼を抉る様に得体の知れない手の大群が真穂を襲う。
真穂は至って冷静に聖剣を現し、その手を斬っていった。
(間違いない…これは…)


───悪夢。


「ロキ、居るんでしょ!?ロキ!!」
真穂は聖剣を振るいながら、そう叫んだ。
だが、ロキは現れる気配は無い。
「───フレイ!!」
一瞬、空間が歪んだ。
真穂を襲う手が消えたかと思うと、次の瞬間には新たな手が真穂に忍び寄った。
真穂はそれを斬る事無く、確りと掴む。
「逃がさないわ」
真穂のその言葉に腹を括ったのか、その手は真穂から離れた。
そして、ゆっくりと姿を現す。
「…やれやれ、真穂ちゃんには敵わないや」
「…ロキ───いや、フレイと呼んだ方が良いのかしら」
「そうだねぇ、ロキなんてただの仮名だから」
「…何がしたいの、またこんな悪夢を───」
「…知りたい?」
すると、ロキ───フレイは、するりと真穂の髪に手を伸ばした。
そしてその一束に、口付けをする。
「なっ!?」
真穂は驚き、その手を振りほどくと大きく後退する。
「やだなぁ、そんなに驚かなくても」
「あ、貴方、本当に何がしたいのよ…」

「復讐」

何の迷いも無く、唐突に放たれたその言葉。
それは、重くて暗くて、冷たいものだった。
「バルドルさんに、何をする気なの」
真穂が警戒したままフレイに問う。
「ふふ、そんなの、言ったらつまらないじゃん」
「言いなさい!!」
真穂は素早く聖剣をフレイに振った。
それはフレイを真っ二つに切り裂いた───かと思われたが、それは残像。
フレイは気付かぬ間に真穂の背後に居た。
「!!」
「そんなに怒らないでよ。悪夢[これ]は、ほんの挨拶」
フレイは真穂の瞳を覗き込んだ。
真穂の身体が金縛りに遭った様に動かなくなる。
「あ…」
フレイは真穂の唇をするりと撫でると、不気味に微笑んだ。
「楽しみにしててね、真穂…」



次の瞬間、その空間と真穂の意識は弾き飛んだ。
真穂が目を見開くと、そこは自らの部屋だった。
「はぁ、はぁ───」


───悪夢[これ]は、ほんの挨拶───


「バルドルさん───!!」

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