プリ小説

第2話

バルハラ
「───」
真穂は、目を覚ました。
右側、白い肌色の顔は寝惚けが取れぬまま呆けているが、左側の凛々しい黄金の肌色の顔はすっきりしている。
大きなベッドから出ると、真穂は畳んでいた翼と共に背伸びをした。
広い、煌びやかな部屋。
紅色の絨毯が広がり、漆の掛かった茶色の壁。
シャンデリアが垂れ下がり、大きな窓から心地良く朝日の光が注ぎ込む。
軽く、柔らかな羽毛が沢山入った布団を畳み、金色の装飾が美しいドレッサーに自身を映し、髪をブラッシング。
長いネグリジェを少し引き摺りながら、大きな部屋のドアを開け、外に出る。

長い、美しい廊下を歩く。
レッドカーペットが敷かれた床。
壁には見事な神々の絵が飾られてあり、時々その絵は動く。
そして幾つかのドアを通り越した先に、階段。
気品のある階段を降りてゆくと、その先には広間と大きなドアがある。
真穂はそのドアをゆっくりと開けた。



「おはようございます、オーディン…じゃない、真穂さん」
にこやかに挨拶する男性。
透き通った金色の髪に、スマートな体型。
藍色掛かったタキシードに身を包み、手には幾つかの書類がある。
「お、おはようございます…バルドルさん」
バルドルと呼ばれるその男性は、微笑みながらスッと真穂の横を通り過ぎて行った。
真穂は少し不快な顔をするも、そのまま先へと進む。

そこは、巨大な食堂。
「おはようございます、真穂様」
「ご機嫌いかがですか、真穂様」
口々にそう言う、女性達。
鎧を思わす衣装に身を包み、真穂の朝食をてきぱきと用意する。
真穂は招かれるまま、1番大きな椅子に座り、エプロンを付ける。
「あ、ありがとう…聖夜は?」
「聖夜君は、まだ来られないようで…」
と、女性の1人がそう言った途端に、物凄い勢いで部屋に入ってくる少年。
「今来たぜー!!」
真穂の座る椅子の前で急ブレーキを掛けると、少年───聖夜は、ニッと笑った。
「おっはよう、真穂!」
「おはよう、聖夜…相変わらず朝から元気で何より…」
「へへへーっ!あ、ワルキューレさん達、俺の朝飯も頼む!」
ワルキューレと呼ばれる女性達に向かい、そう言い放つ聖夜。
「…朝から騒がしいので少なめで用意させてもらいます」
ワルキューレの1人が言い放つ。
「えぇーっ!?何でだよぉ」
「はい、煩い。更に減らします」
「えええええーっ…」
そんなやりとりを繰り返しながら、刻々と時間は過ぎてゆく───





ここは、バルハラと呼ばれる巨大な宮殿。
オーディンが主人である、生前に良き行いをした者や善良な神が招かれる場所。
現在はワルキューレと呼ばれる、オーディンに使える女性達とエインヘルセルと呼ばれる騎士が合計800人存在し、バルドルを初めとする善良な神々が数名住まう。
真穂がオーディンとなった事で、この宮殿は真穂の物となった。


オーディンとなり、アサヤに自身の人生を代えてから数日。
真穂は未だその規模の大きさに付いてゆけぬまま。
少しのパンと死んでも生き返ると言われる猪・セスルムニルの肉を食し、真穂は聖夜と共に部屋に戻っていく。
(…オーディンも大変だなぁ…)
少し、不安そうに俯く真穂。
それを直ぐに察したのか、聖夜がポンポン、と優しく肩を叩いた。
「大丈夫だって、真穂!俺が付いてるからさ」
「…うん…ありがとう、聖夜!」
長い廊下も、2人ならあっという間に渡り切ってしまう。



そんな2人を、この先どんな困難が待ち受けているのかは、今は誰も知らない。

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