プリ小説

第10話

無情
「無情…?」
翼を畳み、悪魔を蹴り飛ばすバルドルを見る真穂。
「そう」
バルドルは真穂を見、悪魔を見据える。
「悪意などにこちらが情を持つ必要は無いという…」

「残酷な現実を突き付けるんです」

バルドルのその青い瞳は、今までに見た事の無い程静かで───
それでいて、悪魔を許すまじとする強い意志を感じさせる、良くも悪くも威圧的なモノだった。
「…リスクを伴う…とは?」
「他の雑念が無ければ良いのですが…少しでも負の感情を持ってしまえば、悪魔の悪意がこちらに逆流してきてしまう」
「…つまり…?」
「…ただ殺すよりは確率は少ないですが…かなりのダメージを負う恐れが有ります…だから通常、悪魔退治は善意を持って行うのです」
バルドルはハッキリとは口にしなかったが、それはつまり命に関わるという事。
真穂はごくりと唾を飲んだ。
「まぁ、そのリスクと引き換えに悪魔が退治出来るのであれば…私はそれが本望です」
バルドルは今一度悪魔を見据えた。
異常なまでの、無表情で。



「バルドルの事は、検索するな」
「…は?」
ウルドは、聖夜にそう言い放つ。
「何でだよ、個人情報の検索は良くねェから?」
「そういう事ではない」
「じゃ、どういう事」
黙り込むウルド。
聖夜は大きく溜息を付くと、椅子から立ち上がり、ウルドを見据える。
「アンタらノルネンが悪魔退治を真穂にさせるから、色々と知る必要が出て来たんだよ。ロキとかいう悪魔にバルドルが関係ありそうだから、こうして…」
「そこがいけないのです」
「え」
声を荒らげたウルドに、驚く聖夜。
ウルドはそれを自身でも驚いたのか、一旦深呼吸をした。
「…ロキは、危険です…下手に関わるべきでない」
「だから、悪魔退治をする上では…」
「駄目です、真穂には悪魔退治はしてもらいたいのですが、ロキとは関わらないで頂きたいのです」
心配げな表情になるウルドの肩を、聖夜はぽん、と叩いた。
「真穂の心配してくれてんのか」
「ま、まぁ…」
「まぁ大丈夫だ、俺が真穂を守るからさ」
ニッ、と笑ってみせる聖夜。
ウルドは折れ、溜息を付くとふわり、と1冊の本を浮かし、聖夜に渡した。
「…ここに、バルドルの事が書かれています」
「マジか…すげぇな女神サマ」
「悪用なさらぬように」
「あったりめぇよ」
ウルドは一礼すると、光になってその場から消えた。
聖夜はその光を見送ると、その本をゆっくりと開いた。



(無情になれば、倒せる…)
真穂は、どうしてもそれをする気が起きなかった。
死ぬ恐れがあるのが怖いわけではない。
ただ…
「私には…出来ません」
そう呟き、立ち上がる。
「…」
バルドルは静かに真穂を見た。
「私は…私なりの方法で…私なりの善意で、悪魔を」
そして倒れ、呻く悪魔を見詰める。

「救います」

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