プリ小説

第12話

浄化
真穂は1歩1歩、悪魔に近づいてゆく。
バルドルの蹴りが効いていたのか、悪魔は苦しみながらも真穂への敵意を剥き出しにした。
(悪魔にも、個性があるんだ)
聖剣を天へ翳す。
(個々に合った方法を見出さねば)
その凛々しい姿は、オーディンそのもの。
威厳と優しさの溢れる表情のまま、真穂は悪魔の前に軽く跪く。
「私が憎いですか」
静かに、悪魔に問う。
悪魔は苦しそうに喉を鳴らす。
「憎いのならば」
目を閉じ、聖剣をくるり、と回す。
光の鎖が悪魔の身体を縛った。
「思う存分憎むが良い」
鎖はぎりぎりと悪魔の身体を締め付ける。
悪魔は足掻く。
だが、足掻けば足掻く程鎖に締め付けられる。
悪魔の赤黒い瞳から一筋の涙が零れた。
「人を憎んでも、己が傷付くのみ」
静かに、悪魔の涙を指で拭う。
「憎しみをも乗り越える力を手に入れる覚悟はあるか」
その問いに、悪魔は泣きながら頷いた。
「良いだろう」
聖剣で光の鎖を斬る。
鎖は粉々になり、その粒子は悪魔を優しく包み込む。

「憎むのは簡単で、許すのは難しい」

「闇に逃げ込むのも容易い事」

「立ち向かってこそ光はある」

一言一句、自らに言い聞かせる様に───その悪魔を戒める。
鎖の粒子と共に、悪魔の禍々しい、憎しみに満ちた表情は和らいでゆく。

「今は生きよ」

「そして光を掴め」

「母なる生命の元へ」

真穂の言葉で、悪魔は安らかな表情になった。
その悪魔は、スーツを着た青年だった。
解けていたネクタイを締め直し、真穂は笑った。
「頑張って」
その言葉に、青年は微笑み───暖かな光を放ちながらゆっくり消えていった。


(なるほど…)
その光を見送る真穂を、見詰めるバルドル。
真穂は振り向き、ニッと笑ってみせた。
「これが、私なりの方法です」
バルドルも思わず笑った。
「悪くない。まだまだ未熟ですが」
「うぅ」
渋い顔をする真穂の頭を、バルドルは優しく撫でた。
「だが、そういう時はあのサンタクロースに頼りなさい」
「は…はい!」
心から喜ぶ真穂を見て、バルドルの心も安らいだ。
「…ところで、いつまで、こう…?」
ずっと優しく頭を撫でるバルドルに、思わず赤面してしまう真穂。
バルドルは慌てて手を離した。
「あ、す、すまない…つい、弟を…」
「弟?」
「いえ、何でも無いです、帰りましょう」
しれっと踵を返すバルドル。
真穂は少し首を傾げるも、認められた事に胸を弾ませ、あまり気に掛けなかった。

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