プリ小説

第16話

兄弟の過去
バルドルは、神界ムスペルヘイムの名門の1族の長男の、光明の神として生まれた。

その1族の名に相応しく、何事も完璧に熟し、周囲の人々からの信頼も絶大で、神の鑑の様な存在だった。

そんなバルドルが、唯一弱いのは弟のへズルだった。

へズルはバルドルより6歳下の、静寂の神。
その名の通り、活発な兄とは反対に、物静かな神だった。
バルドルはへズルをとにかく可愛がり、唯一無二の兄弟として平穏に過ごしていた。


そんなある日、バルドルとへズルの両親が死んだ。
悪魔退治の際に、その悪魔の悪意に呑み込まれ、自爆したというのだ。

バルドルは1族の名を正式に引き継ぐ事になり、へズルに構う暇も無く悪魔退治に徹していた。

その働きぶりが評価され、バルドルはオーディンに、バルハラに招かれた。
へズルの離れて暮らすのは辛かったが、ワルキューレやエインヘルヤル達に迎えられ、悪い気はしなかった。


それから、数ヶ月が経った。


悲劇が、起こったのだ。


その日、現界アルフヘイムに行っていたへズルは、火事に遭遇した。
それは、事故とも、事件とも思えない程の炎だった。
まるで、神が起こした様な───
へズルは深く考えぬまま、その火事に巻き込まれた人々を救っていた。
救っていたと言えども、実体の無い神はその力で救うしかない。
へズルはバルドル程力があった理由では無く、苦戦を強いられた。
人々を助け出した後、へズルは力尽き、その場に倒れた。
実体が無い故に、炎に晒されようとも身体には影響は無い───ハズだった。

が、へズルは力を使い果たし、身体が弱まっていた。

そこに迫り来る、炎の魔の手───



へズルはそれを避けられず、その炎はへズルの両眼に。



その知らせを聞いたバルドルは血相を変えて、へズルの元へと駆け寄った。

緊急治療は施された後だったが、その両眼の上には包帯が。

「ごめんね、兄さん」

「もう兄さんの顔、見られないや」



それからバルドルは、バルハラに篭もり、研究を重ねた。

自らの弟に、再び光を取り戻す為に。

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