プリ小説

第17話

招待
その日、バルハラは慌ただしかった。
ワルキューレとエインヘルヤルがバルハラ内を走り回り、掃除なり整頓なりをしていたからである。
事情に追い付けない聖夜が真穂の元を訪ねる。
真穂も真穂で焦っていた。
「…なんだって、今日はこんなに慌ただしいんだ?」
「バルドルさんの弟、へズルさんが来るのよ!!」
「な…」
驚いた聖夜。
失明しているへズルが、バルドルに来るなんて───
「へズルさんに万が一の事が無いように、こうしてバルハラ内を整頓してるみたいよ」
「そっか」
「で、聖夜は今暇?」
真穂にがっしりと肩を掴まれる。
「え、お、おう」
「ならこれ手伝って!!」
目の前にどっさりと置かれる資料の山。
「今日までに終わらせなきゃいけない魂の送り先決め」
「まじかよ、これ今日中に全部か!?」
「今朝思い出しちゃって…大分前に渡されてたんだけど…」
真穂は目を逸らしながら話す。
聖夜は大きな溜息を付いた。
「しょーがね、へズルってのが来るまでに終わらせりゃ良いんだよな?」
「うん、私頑張るから、聖夜、なんとかサポートを…」
「任せろ任せろ。既に死んでる俺のやる事っつったらもう、真穂に付いてく事しかねーからな!…んでも待てよ、それじゃ俺が情ねぇヤツみたいな…」
「だーもー、そこら辺は良いのよ、聖夜は傍に居てくれるだけで心強いんだから!」
ぐるぐると思考を巡らせる聖夜の背中を軽く叩いてそれを終了させ、真穂は資料を机に運んだ。
「さてと、始めますか!!」
「おうっ!!」
2人はガッツポーズをすると、大量の資料を分け始めた。



───その晩。
「…終わっ…た…」
「ありがと…聖夜…」
大量の資料を無事分け終えた2人。
真穂の部屋で完全に伸びていた。
死者の魂をどの世界へ送るか───簡単な様で、やはり難しい。
死因や生前の経歴等を見ると、精神的にも大変なのだ。
「さ、てと…これを提出したら、へズルさんをお出迎え…」
と、立ち上がった真穂だがふらついてしまう。
ずっと集中して座り、頭を使っていたのだから無理は無い。
聖夜は咄嗟に真穂を支えると、資料を持った。
「真穂、俺に掴まってろよ、そしたら広間まで連れてくからさ。そんで俺がこれ提出する」
「本当にありがとう聖夜…私聖夜が居ないとダメダメだ…」
「そう言ってくれて嬉しいぜ、へへっ」
ふらつきながらも、聖夜は真穂を広間に送り届けた。
そして自らは大量の資料をバルドルに───否、今回はエインヘルヤルに提出する。
そして一息付くと、また広間に戻っていった。



「真穂様、そろそろへズル様がいらっしゃいます」
「ありがとう」
疲れ果てて座っている真穂に、数人のワルキューレが対応する。
「あ、バルドルさんは…?」
「玄関でへズル様を待っておられます」
「そっか、ありがとう」
盲目で、実の弟だ。
そりゃ出迎えるだろう、等と考えながら、真穂は目を閉じた。

すると、扉がガチャ、と開いた。
そこに目を向けると、バルドルと───

バルドルに似た、少し小柄な…
両眼に包帯をした少年が居た。

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