プリ小説

第19話

何処
「…真穂さんは、どうしてオーディンに?」
沈黙を破ったのは、へズルだった。
真穂は驚き咳き込むと、水を飲み、落ち着いた。
「まぁ…それには色々ありまして…」
言うべきかどうか迷った。
人間の身でありながら、1人の人間の為にそれを半分捨てた、等と───
「…もしかして、1人の人間の為に…とか?」
「ぬっ!?」
図星を突かれ、驚き変な声が出る。
「わぁ、真穂さんの事だったんですか!」
へズルはにこにこと無垢に笑う。
「どこかで、聞いたのか?」
バルドルの問いに、へズルは笑顔で答えた。
「うん、実は最近親しくなった神様が居てね、その神様が教えてくれたんだ」
「どんな神だ?」
「うーんと…詳しくは教えてくれないんだけど」
考えるように、へズルは包帯を触った。
「あ、名前は」


「フレイ」


その名を聞いた瞬間、バルドルの顔が強ばった。
その場に居た大勢のワルキューレも、エインヘルヤルもその名を耳にした瞬間に動きが止まった。
聖夜でさえ、一旦考えた。

───フレイ。何処かで聞いた事が───?

最初に口を開いたのはバルドルだった。
「…へズル、そいつとは何処で知り合った?」
「うん、半年前くらいかな…外に1人で居たら、話し掛けてきてくれたんだ」
バルドルの顔が、険しいものになる。
「凄く良い人でね、面白い話を沢山してくれるんだ」
へズルは、バルドルを見た。
その瞳は何処か、恐ろしくて───
真穂は目を凝らした。
「目の見えない僕にも分かるように、脳内にイメージを映してくれたり」


「とっても優しいんだ」


へズルは、バルハラに泊まる事無く帰宅した。
へズルを見送った後、バルドルは急いで部屋へと入った。
「バルドルのヤツ、どうしたんだ?」
「聖夜、気付かなかった…?」
「何が?ああ、フレイが…どうたら?」
「そうよ、その時のへズル君の表情───」
それ以上は、真穂は言わなかった。
聖夜も、それを悟った。
そして、必死に記憶を辿る。

フレイ。

何処かで───

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