プリ小説

第38話

警報
「───!!」
バルドルは、布団から飛び起きた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
息を荒げながら、辺りを見る。
そこは、見慣れた自らの部屋だった。
「フレイ…」
「バルドルさん…?」
声のした方を向くと、そこには心配そうにバルドルの顔を覗き込む真穂が居た。
「ま、真穂さん…」
「大丈夫ですか…!?魘されていた様ですが…」
「ええ…大丈夫です、少し悪夢を…」
「フレイですか!?」
食いついてきた真穂に驚くバルドル。
真穂は我に返ると、自らを制止させた。

───フレイが来た事は、バルドルに伝えるべきで無い。
そんな警報が、頭の中で鳴り続けていた。

黙っている真穂から何かを悟ったのか、バルドルは微笑んだ。
「真穂さ…」
「どんな夢、でしたか」
「え」
バルドルの言葉を、真穂が遮る。
話すべきでは無いとしていた夢だが、バルドルは真穂の気迫に圧された。
「殺される…夢です」
「え…」
「フレイ…の様な、ヘズルに」
真穂の脳内の警報の鳴る音が大きくなる。
───危険だ。
「ば、バルドル、さ…」
「真穂さん、ヘズルの所へ連れて行ってもらえますか」
「な、何を…!!今は危険で…」
「だからこそ、です。今のうちに、薬を渡しておきたい」
バルドルは布団から出ると、真穂の護っていた薬を手に持った。
その瞳は、あまりにも静かに強くて。
「…バルドルさん…」
「お願いします。道は案内しますが、いざという時の為に」

───駄目だ、今連れ出したら駄目。

必死に自らを制するが、バルドルの決意が固い事も痛い程伝わってくる。

暫くの沈黙の後、遂に真穂は折れた。
「…分かりました…でも、絶対に私の側から離れないで下さいね」
「ありがとうございます」
「絶対、護りますから」
真穂は小指を差し出した。
が、バルドルは首を傾げるばかり。
「あ、えっと、これは人間が約束事をする時にする…儀式です」
「儀式、ですか」
「はい!だからこうして」
真穂は自らの小指をバルドルの小指と結んだ。
「指切りげ〜んまん、嘘ついたら針千本飲〜ます」
子供の様に微笑みながら指を弾ませる真穂を見て、バルドルは穏やかな表情になった。
「針千本、ですか」
「はい、飲まない様にします」
「針千本で無くても良いのでは?」
「それは、決まり文句と言うか…」
そんな、いつもの様なやりとりに心安らぐバルドル。
だが瞳の奥には、確かに固い決意の色が現れていた。

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