今日は俺があなたと一日過ごす。
名前を呼んでも反応しないあなたを何度見てきただろうか。
その度に胸が締め付けられる。
お願い……
起きてよ……
こんなときばかりは
頼らせてください。
お願い。
愛のキスってほんとにあるのかな。
でも呼吸器外したら……
どうしたらえぇの……
俺は思いきって人工呼吸器を外した。
ピー
嫌な音が鳴り響く。
とっさにキスをした。
涙が溢れて抑えられなかった。
俺は1分くらいし続けただろう。
その間もずっと嫌な音がなっている。
この音はあなたがこの世を去ったという合図。
あなたがゆっくり目を開いた。
あなたに人工呼吸器をつけた。
あなたが起きた…!
起きてくれたんだ!
愛のキスはほんまにあったんや!
でもあなたは涙を流しながら精一杯の力を振り絞って
聞こえるか聞こえないかわからないような声で言ってくれた。
あなたが目を閉じる。
お願い。
まだ行かないで……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!