【黒髪の館〜魔女〜】
コツ。コツ。コツ。
ヒールの高い音がする。
「_様。お目覚めですか。」
「ええ。」
その方は私の淹れた無糖のコーヒーを
いつも欠かさず毎朝飲む。
口に入れた後しばらくゆっくりと舌で掻き回して味わい、ゆっくりと喉に通す。
喉の血管が浮き上がる。
あゝ、なんと美しいものか。
「本日の"血"は特撰のものでございます。」
「とても美味しいわ。」
「嬉しきお言葉。」
すると、
トン、トン。
とドアをノックする者がいる。
「今日のお客様はどうやら礼儀正しいようね。やりがいがあるわ。」
「本日は私がお呼びした特別なお客様です。
どうやらあの"赤い薔薇"に興味があるとか。」
「あら。それはますます楽しみになるわ。」
「素敵なディナーにしましょう。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。