第10話

メインディッシュⅠ
79
2017/12/23 04:19
【黒い髪に、赤い薔薇を___。>>1】



友人はもういない。
ならばもう、一人で逃げ出して帰りたい。

今度は自分の意志で階段への道を急ぐ。
あの部屋を離れるたびに、心臓が重くなる気がした。
でも今はそれどころじゃない。
早くここから出なければ、
___っ殺される。


背後に感じる殺気に怯えながらも、走るスピードを加速させる。


さっき登ってきた階段だ。
その隣には3階へと続く上りの階段がある。
俺は下りの方の階段を、転げ落ちそうなくらいのスピードで駆け下りる。

すると、階段の段の板が持ち手と平行に斜めに合体し、並び始めた。
気づいた時はもう遅かった。
滑り台のようなそれにまんまとハマり、
そのまま真っ直ぐ下まで進んでゆく。
なんて親切なのだと思ったのも束の間、
着いた先はフロアに三部屋しかない階。

そう、二階だった。

一気に顔が青ざめるのがわかる。

何度やっても無駄だった。
まだ未開発の機械の危険なボタンを危うく押してしまった気分である。

最悪だ。

自分の未来が急に恋しくなって、涙が止まらない。
絶望の淵に立たされ、うなだれていた。

すると階段はいつの間にか下りの階段はなく、上りの階段だけになっていた。
その階段は段がなく、さっきの滑り台のようになっていた。

これじゃ到底登ることすらできまいとさらに絶望に浸っていると自分の座っていた板が上りの階段にくっつき、エスカレーターのように上へと登っていく。


一番上まで来たところでピタリと止まる。
3階だ。

下を見るとさっきまで自分がいた所の板は元通りになっていた。
階段も二つある。

何なんだいったい。
これから俺はどうなる。

もう何も考えられなくなっていた。


気づけばもう、フロアに一つしかない部屋のドアの前に立っていた。

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