第11話

メインディッシュⅡ
77
2017/12/23 16:27
【黒い髪に、赤い薔薇を___。>>2】



目の前にあるこのドアは、今まで見てきたものと違った。
今までは木材で造られ、ドアノブが錆びている古びた小さなドアだった。

でも今回のは違う。
大きくて、ドアノブは金で出来ていて光沢があり、扉全体が金と赤のツヤツヤとしたものだった。
どこも古びた様子がない。

恐る恐る、震える手がドアノブへと伸びる。
腰が抜けそうな体を足で支え、なんとか前へ進む。

どうやらこの部屋は、ダイニングルームらしい。

真ん中に縦長の大きな木造机が置いてあり、
その脇にいくつか椅子が並べてある。
一番奥には少し豪勢な一回り大きい椅子があった。

部屋の奥には2つ部屋がある。
なんの部屋なのか気になり恐る恐る覗こうとした。
すると自分が開ける前にドアが勝手に開き、
と思うと中から人が出てくる。

黒いスーツに身をまとった執事らしき男の姿…っ?!

あ、あれは…。
…いや間違いなくそうだ。



そこに居たのは、さっき死体で見たハズの友人の姿だった。


「お、お前…どうして…ここに…。」

そう言いかけたところで後ろからまた人が出てくる。
コツ、コツ。
と甲高く鳴り響く靴の音。

そこから現れたのは、ツヤツヤとした黒い髪の毛をもち、赤い口紅にキラキラと光る黒いドレスとヒールを身にまとった女だった。

薔薇のような美しさが見て取れる。
魔女のような容姿だが、薔薇の様に美しい。

その美しさに見とれていると、女が友人に声をかける。

「お客様へのお料理をお持ちして。」

「かしこまりました。」

友人はまるで、別の人間のようだ。
スタスタとまた先程の部屋へ戻ってしまった。

女がほほ笑みを浮かべてこう言う。

「ご挨拶がまだでしたわね。私はこの館で魔女をやっている者です。
色々聞きたいことが山ほどあるかとお思いですが、ひとまずどうぞお席におかけになって下さいませ。」

「…は、はあ…。」

女が示す席へ腰を下ろす。
その席は少し豪勢な椅子のすぐ隣の椅子だった。
もうすでにナイフやフォークやお皿が用意されていた。
女は先程の少し豪勢な椅子に深く座る。

(普通客の俺がそこに座るものなんじゃないのか…?)

とは思ったがそんなことは到底言えない。

すると容姿が友人のあの男が料理をワゴンに乗せ、運んでくる。
美味しそうなチキンやスープなど、
意外としっかりした普通の料理で安心した。
魔女の館なのだからやはり、少し覚悟はしていたのだが。

どうやらそいつも食事を共にするらしい。
俺の目の前の席へ座り、食事の準備をする。

(やっぱりどこを見てもあいつだよな…)

こちらの視線に気づいたのか、一瞬目があった。
そのときの友人の顔が、なんだか少し葛藤しているようだった。


焦りと不安と恐怖が見て取れる。


…何故そんな顔をする。



やはり彼には何かがあるのだろう。

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