【黒い髪に、赤い薔薇を___。>>4】
思い出した。
これは彼女の髪の毛だ。
そして、あの女は俺の彼女だ。
1階から3階までで、部屋が4→3→1の順にあったこと。
この館の噂であるあの"赤い薔薇"の色合いも。
あの女の容姿も中身も全て___。
なるほど。
俺は招かれた客らしい。
彼女は初めから俺が目的だったのだろう。
だから俺の唯一の友人である彼を囮(おとり)にしたのだ。
そして友人は自分の命と引き換えに彼女に命令されたのだろう。
『俺にずっとここで暮らすことを誓わせろ。』
と。
だから、あの棺桶にいる友人は半死状態だ。
体はほぼ死んでいる状態だが、
意識だけがこちらの別の体に移し取られ、
執事として任務を果たそうとしているのだろう。
ただ彼女はもう…幽霊だ。
俺がこの先ずっとここにいることになるというのはつまり、
…俺は死ぬ。
ということになる。
きっとさっきの友人の葛藤の表情からして、
任務をこなさなければ自分が死ぬ。
だが、任務をこなせば自分の友人が死ぬ。
というこの二つの考えが彼を狂わせているのだろう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。