--テヒョンside--
バタッ
あなたが倒れた。
俺の目の前で。
俺は、自分が何されるか分かってた。
でもあなただからいいと思った。
なのに…
そう言いながら
必死であなたの身体を揺さぶるが、
ビクともしない。
顔を上げると、
逃げようとしている、ジミンって奴が
視界に入った。
ジミンの足が止まった。
人間のクズ。
その呼び名に相応しい。
ゴツッ
俺は殴った。
ゴツッ
そこから、殴り合いに発展した。
こんなに傷が出来たのは生まれて初めて。
殴られたのも初めて。
けどさ、
生まれて初めて出来た愛する人を
自分の力で守るって、
痛みさえも感じないんだな。
そう俺が言うと、ジミンは足早に、
俺達のいる場所を後にした。
“スタンガンでは人は死なない”
その文字を見て、安心した。
ジミンが行った後、
俺はあなたをとりあえず自分のベットに寝かせ、
スタンガンについての事を、
必死に検索していた。
スタンガンは気絶するだけで、
死にはしないそう。
本当に良かった。
にしても、
何であんなこと…
もしかして…
婚約者の話。
父さんに言われたんだ。
隣の国の子と結婚しろって。
俺は嫌だと言った。
俺はあなたが好きだって。
でも、その思いは通じなくて、
見合いの前の日、俺はあなたを手放した。
辛かった。
苦しかった。
もっと一緒に居たかった。
愛なんてどうでもいいと思ってた。
俺に愛を教えてくれたのはあなただった。
でもそれが運命。
あいつにはもっとマシなやつがいるはず。
俺は王様だから。
あいつはずるい。
せっかく決意したのに、
あいつが出ていくまで、
絶対に涙は流さないと決めていた。
あいつが俺の部屋を出ていった後、
声を抑えて泣いていた。
愛がこんなに苦しいものだなんて。
辛いものだなんて。
あいつに出会うまでのおれは知らなかった。
俺が王様じゃなかったら、
あなたともっと早く出会えていて、
あなたを傷つけることなく、
幸せになれていたのかな。
王様というレッテルに囚われず、
ありのままの自分で
愛することが出来ていたのかな。
今までの事を思い出していたら、
自然と涙が出てきていた。
今まで、沢山遠回りしてきた分、
永遠に愛するんだろう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!