あの事があってから、
王様は私に性欲処理を求めなくなった。
というか、
会わなくなったと言うのが妥当だろう。
私は、王様の用意してくれた部屋で
一人ベットの上に座って、
そこら辺にある雑誌を手に取り読んでいた。
慣れ親しんだ声に驚き、
はっと顔をあげると、
そこにはグクがいた。
そっか。
王様は私を使わなくなったから、
グクもここにいる意味が無くなったんだな。
ちょうどいい。
これで完全に終われる。
“お別れ”という言葉に、
少し胸がキュッとなったのは気のせい。
別れを告げるなら、
早く言ってほしい。
何で長くするのかな。
話がだらだらと長引くのを予想していた私は、
意外な言葉に驚いた。
ただ唖然とするばかり
グクが全て知っていた事に気付かず、
“知られたくない”ただそれだけの感情で
グクを傷つけていた。
耳を塞ぎたくなる。
この後に続く言葉なんか予想がつく。
聞いてしまったら私は、
自分の感情が分からなくなってしまう。
誰を愛しているのか。
誰を思っているのか。
そう告げるとグクは
“じゃあね。またどこかで”
と言って、私の部屋を後にした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!