声が聞こえた方へ振り向く。
その人はジミンと言うらしい。
いやいや、
夜道で女の子に声かけて、
肩掴んでまで話そうとするあなたは
怪しい人としか思えませんが。
なんだそれ。
声かけただけって…
この人訳分からない。
この人頭おかしいんじゃないんでしょうか…
だって、声かけただけならもういいでしょ。
“あの、もういいですか”
そう言って今度こそ私が離れようとしたら、
腕を掴まれた。
そう言うと、私はジミンさんに腕を引かれ、
知らない場所へと連れていかれた。
そして着いたのは、高層ビルの前。
ここの高層ビルのオーナーが、
今、私の腕を掴んでいるジミンさんで、
かなりの金持ちらしい。
ここのビル、飲食店も、雑貨店も、服屋も、
すべて揃っているのだそう。
まためんどくさい人に捕まってしまった。
そう言うと、ジミンさんは
私の腕を掴んだまま、
ビルのパスワードと指紋認証を素早く済まし、
ビルの中へと足を踏み入れた。
思ったより広くて、
こんな大富豪近くにいたんだなと驚いた。
エレベーターで三十階のボタンを押して、
三十階につくと、
とても広く、
そして豪華な部屋が目に飛び込んで来た。
いやいや、驚くレベルの話じゃないですよ。
言葉失います。こんな部屋。
“ここ座って”
そう言われ、一人用のソファに腰を下ろした。
ふかふかで、座り心地は抜群にいい。
でも、疑問に思った。
何でこんな大富豪が王国にいるんだろう。
しかも、普通の町に。
こんな人いたら、王国側が放っておくわけない。
返ってきた答えは、
信じられない答えだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!