実の兄…?
この人が…?
信じられないまま、どんどん話が進んでいく。
キムテヒョン。
彼の過去にはそんな事があったなんて、
私は全く知らなかった。
いや、知ることも無かった。
パクジミンに会うまでは。
やばい。
少なからずそう思った。
こんなに後ろめたい気持ちだったなんて…
私の言葉を遮って言った、
ジミンさんの言葉は、
聞こえてくるのと同時に、
嫌な記憶がよみがえってくる。
思い出したくない記憶。
私が何も言わないでいると、
いつの間にかジミンさんは
私の側にいて、
顔を覗き込んできた。
あの時の記憶。
出ていってと言われたあの時。
大好きだと言ったあの時。
結ばれなかったその思いに、
絶望に堕ちたあの時。
涙も出なくなった枯れた心に、
潤いを与えてくるその言葉。
それは止まることを知らずに、
思いのまま、流れ出す。
私は弱い人間なのだろう。
彼に抱きついた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!